退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『わたしを離さないで』(2010) / カズオ・イシグロ原作のパラレルワールド

DVDで映画『わたしを離さないで』(2010年、監督:マーク・ロマネク)を鑑賞。カズオ・イシグロの長編小説の映画化作品。

外界から隔絶された寄宿学校ヘールシャムは、臓器を提供するために生まれてきた「特別な存在」を育てるための施設。そこで小さい頃からいっしょに過ごしてきた、キャシー(キャリー・マリガン)、ルース(キーラ・ナイトレイ)、トミー(アンドリュー・ガーフィールド)の三人だったが、恋愛関係のもつれからその絆は壊れてしまう。やがて彼らにも避けようのない運命が迫ってくる。「提供」が始まるころ、三人は再会を果たすが……。


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原作小説は未読。こんな話はリアリティーがないと思いつつ見ていたが、どうも最後まで乗り切れなかった。小説や芝居ならまたちがうのかもしれない。舞台は70年代から90年代のイギリス。もちろんパラレルワールドだろうが、どうしても現実の世界と重ねてしまいせいか現実味が感じられない。

この世界の倫理観はどうなっているのか気になって仕方がない。荒唐無稽な設定がなんの説明もなく突きつけられてもどうも入っていけない。いっそのこと近未来を舞台したほうが、映像的には面白かったのではないか。それでもイギリス郊外の寂寥感溢れる風景はドラマのテーマに合っているように思えた。

この映画を見たまず思ったのは、現在放映中のアニメ『約束のネバーランド』と似ているということ。『約束の〜』は孤児院で鬼たちの食肉として育てられる子どもたちの話で、運命を知った子どもたちは手を尽くして脱走を図る。

しかし本作では、登場人物は何度か臓器を「提供」をして「終了」する運命を諾々と受け入れて抵抗することはない。これは人造人間に先天的に刷り込まれているのか、教育で洗脳されたのかわからないが腑に落ちない。この点もどうも乗れない理由のひとつである。