退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『たたら侍』(2017) / めちゃ豪華だけど映画の文法を外してる

DVDで映画『たたら侍』(2017年、監督・脚本:錦織良成)を鑑賞。時代劇ファンとして注目していた作品だったが、公開時に出演者の不祥事のため上映規模が大幅に縮小されて結局見れなかった記憶がある。

たたら侍 Blu-ray(通常版)

たたら侍 Blu-ray(通常版)

  • 発売日: 2017/11/08
  • メディア: Blu-ray

戦国時代末期。出雲の山奥に存在した門外不出の高度な鉄作りの技“たたら吹き"を生業にする村があった。この一子相伝の技術を継ぐ運命の背負う伍介(青柳翔)は、野盗たちに村が襲われるたびに、強くなりたいと思い村を出て旅に出るが……。


【予告編#2】たたら侍 (2016) - 青柳翔,小林直己,田畑智子

映像は本当に素晴らしい。主人公が暮らす山中の風景が深い緑とともに美しく撮れている。“たたら吹き"の作業場での熱い鉄の色合いも印象的だった。屋外の明るい風景と屋内の暗い製鉄作業の明暗が対照的なのもよい。

美術やオープンセットが豪華で驚く。とくに主人公が近江に向かう場面で登場する和船(北前船?)がすごい。映画のために作ったのだろうか借り物なのだろうか、いかにもカネがかかっていそうだ。映画館のスクリーンで見てみたい映画ではある。

しかし映画としては首を傾げたくなることも多い。まず観客に提供される情報が少なすぎる。いったい時代はいつで政治状況はどうなっているのかなど細かい設定がまずわからない。場面が移るときに何年ぐらい経ったなどの時間経過もよくわからない。まあ何でもかんでもナレーションやテロップで説明されても困るが、もう少し状況説明をきちんとしてほしい。

ストーリーも単調で途中で飽きる。唐突に戦闘が始まって登場人物が次々に死んでいく、という繰り返しなのだ。最後も生き残った主人公がしみじみ何かを悟ったかのようなモノローグで終わるが、観客は置いてきぼりになってしまう。

出演者は、中村嘉葎雄佐野史郎豊原功補山本圭笹野高史奈良岡朋子津川雅彦という錚々たる顔ぶれが名を連ねている。これだけでも予算が潤沢だったことがわかる。EXILEはカネがあるなぁ。しかしそれだけは映画としては成立しないことも同時にわかる。いろいろもったいない。

せめて、“たたら吹き"の工程を忠実に再現して、丁寧に説明してくれれば資料映像な価値は残ったのにと思われる。