ミュージシャンで俳優のピエール瀧がコカインを使用したとして麻薬取締法違反の疑いで逮捕された。この事件は、連日、メディアを騒がせているが、あいかわらず日本の悪弊が繰り返されている。
それは、スキャンダルを起こした俳優の過去の出演作が封印されることだ。俳優の不祥事と作品はまったく関係ないはずなのに、今回もいつものように封印されてしまった。
いつものことかと思ったが、AbemaTVで配信されている井上真央主演の朝ドラ『おひさま』でも、ピエール瀧の出演回がカットされてフンガイした。毎日帯で配信されているのに配信が休止されたのだ。アーカイブである「ビデオ」も歯抜けになっている。「地上波だけなくネット配信もお前ものか」と叫びたくなった。ちなみにAmazonプライム・ビデオでは、いまのところ全話見ることができる。
このドラマは、井上真央が扮するヒロイン陽子が、信州の安曇野や松本を舞台に、戦前、戦中、戦後をたくましく生きていく一代記。ピエール瀧は、陽子が師範学校を卒業して教員として最初に赴任する国民学校の代用教員の役。
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ドラマは佳境に入り、戦時中の国民学校で陽子と生徒たちの交流や、戦争が激化するなかでの家族との別れを描く重要なパートである。ピエール瀧の役は大きな役ではないが、彼の出演回をカットすると、ドラマの魅力がかなりスポイルされる。この代用教員は、その後、徴兵されて戦地に赴き帰ってこないのだが、彼が去ったあとから配信が再開されるようだ。なんだかな~。
以前も出演者のスキャンダルでお気に入りの時代劇がお蔵入りになって残念だ、という記事を書いたが、状況はまったく変わっていないようだ。こうした自粛が日本特有のことなのかわからないが、いい加減見直してもほしいものだ。
この件について鴻上尚史がTwitterでコメントしているので、最後に紹介したい。正鵠を射ている。
出演者の不祥事によって、過去作品が封印されるなんて風習は誰の得にもならないし、法律的にもなんの問題もないし、ただの思考停止でしかない。ここで制作者は踏ん張って、作品と1人の俳優はイコールではないと持ちこたえないと、この国の文化は悲惨なことになってしまう。
— 鴻上尚史 (@KOKAMIShoji) 2019年3月13日