退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画鑑賞】『家族はつらいよ2』(2018) / 「老いと死」をテーマにしたシリーズ第2作

DVDで『家族はつらいよ2』(2018年、監督:山田洋次)を鑑賞。シリーズ第2作。前作で熟年離婚の危機を乗り越えた平田一家が綴る家族の姿。

家族はつらいよ2 [DVD]

家族はつらいよ2 [DVD]

平田家のメンバーがめちゃめちゃ豪華。これだけの手札を使って、山田洋次監督が撮るのだから一定のレベルの映画ができるのは当然とも言えるが、よく出来ている。連続テレビドラマならば、毎回、それぞれの登場人物をフューチャーした面白い作品になるだろうにもったいない。

しかし前作で熟年離婚を回避した夫婦だが、妻・富子役の吉行和子は北欧に旅行中ということで出番は少ない。スケジュールが合わなかったのだろうか。

周造(橋爪功)は、高齢にもかかわらず工事現場で棒振りをする高校時代の旧友・丸田(小林稔侍)と偶然出会う。丸田は昔は羽振りがよかったが、すっかり落ちぶれボロアパートにひとりで暮らし、家族とも疎遠になっていた。いわゆる下流老人だ。同情した周造は旧友を集めて、丸田を励ます会を催す。すっかり上機嫌になった丸田は平田家に泊まることになるが、翌朝、目が覚めると丸田は死んでいた……。


「家族はつらいよ2」予告篇

今回のテーマは「老いと死」。本作は高齢者の危険運転など時事ネタを巧みに取り入れているが、どう考えても映画のなかの家族は「昭和の家族」であろう。高齢者をターゲットに据えた映画づくりとも言えるが、平成ももうすぐ終わりという時代にあまりにも古くさい。それでも、しみじみとした人情噺で最後まで画面に惹きつけられるのは監督の手腕によるものだろう。

本作では無縁社会の犠牲者ともいうべき「下流老人」の姿が描かれている。小林稔侍が演じる下流老人は、経済的に逼迫しても生活保護を受けることを潔しとせず、工事現場で働いているるが、孤独のまま平田家で死を迎える。子どもにも遺体の受け取りを拒否される始末だ。

下流老人は少子高齢社会の日本が避けて通れない社会問題なのだろうが、恵まれた平田家の人たちからは、どこか見下された存在に描かれているように思える。上から目線を感じてしまった。高齢者のなかでも格差が広がるなか、この映画を穏やかな気持ちで見ることができる高齢者はどれだけいるのだろうか。そんなことを思ってみた。

前作同様、丸田が死後の対応で看護師の蒼井優が冷静に対応する。身内に看護師や医師がいると心強い。