退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

ピエール瀧主演のテレビドラマ『64(ロクヨン)』がよかった

2015年にNHKで放送されたテレビドラマ『64(ロクヨン)』(全5回)をDVDで鑑賞。原作は横山秀夫による同名の推理小説。主演はピエール瀧文化庁芸術祭賞大賞やギャラクシー賞を受賞するなど高い評価を得たが、不祥事を起こしたピエール瀧新井浩文が出演しているため、当面NHKで再放送されることはないだろう。しかしどうしても再度見たくなってDVDを借りてきた。

64 ロクヨン  (新価格) [DVD]

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  • 発売日: 2018/11/22
  • メディア: DVD

わずか7日間で幕を閉じた昭和64年に起きた、D県警史上最悪の未解決事件「翔子ちゃん誘拐殺人事件」(通称・ロクヨン)。その時効成立を前にD県警の広報官・三上(ピエール瀧)は、警察庁長官による視察を取り仕切るように命じられる。広報室と県警記者クラブとの対立のさなか、長官の遺族慰問の実現に向けて奔走するが、遺族は頑なに長官慰問を拒む。そして長官視察直前にロクヨンをそっくり模倣した誘拐事件が発生する……。

俳優としての訓練を受けていないピエール瀧の演技は決して上手いとは言えないが、愚直な人柄と組織内の軋轢に苦悩する様子がよく出ている。まさに適役。ピエール瀧を主演に配した一点により、ドラマは成功したと言っても過言ではない。

シナリオも中央と地方、キャリアとノンキャリア記者クラブと広報室など、さまざまな対立軸を多角的に描いていく演出が奏功して見ごたえがある。

またテンポのよいストーリー展開も緊迫感があってよい。これには大友良英の音楽も一役買っている。民放のドラマとはちがい、CMで途切れることがないという利点も十分に活かされているように思う。NHKのあり方には言いたいことはあるが、本作のようなドラマが撮れるのはNHKだけだろう。

日本のテレビドラマの歴史に残る名作のひとつと言ってもよいだろう。ちなみに2016年には監督・瀬々敬久、主演・佐藤浩市による映画化作品が、2部構成で劇場公開された。映画版は未見であるが、テレビドラマ版のほうが評価が高いようだ。