朝ドラ「純情きらり」は、2006年上半期放送のNHK「連続テレビ小説」第74作の作品。原案は津島佑子の小説『火の山―山猿記』。脚本は浅野妙子。主演は宮崎あおい。不思議なタイトルが付いている。
昭和初期の愛知県岡崎市、主人公・有森桜子(宮崎あおい)は幼少期に母(竹下景子)を失い、父親(三浦友和)により、きょうだいとともに男でひとつで育てられる。16歳のとき父は事故死を遂げる。東京への音楽学校への進学があやぶまれたが、父が遺したピアノに触れて、音楽への情熱を新たにする。桜子は幼なじみの松井達彦(福士誠治)ともに、音楽学校を受験するも失敗。音楽学校をあきらめようとするが、西園寺教授(長谷川初範)の励ましもあり、翌年再受験して合格するが……。
このドラマはヒロイン宮崎あおいに尽きる。オーディションなしに抜擢されたそうだが、納得のキャスティングである。童顔なこともあって戦前の青春時代のヒロイン姿がとくに目を引く。本作で演技が認められて、後に大河ドラマ「篤姫」(2008年)で主演を務めることになる。いい人の役を演じることが多いように思えるが、悪女を演じる彼女も見てみたい。
ジャズピアニストを夢見ながら、戦争に翻弄される激動の時代を生きるヒロインを描くという、朝ドラの王道を行くストーリー。しかし最後にはヒロインが死んでしまうという暗いエンディングは珍しい。いつもの朝ドラなら復員した達彦と結婚するあたりで終わらせるところだろう。終盤はかなりのうつ展開だ。
出演者のなかで注目したいのは、ヒロインの義兄を演じた西島秀俊。津軽出身の画家で、原作者の父・太宰治をモデルにした登場人物。津軽弁に味わいがある。桜子が密かに思いを寄せる時期もあり、朝ドラらしくない姉とのどろどろの三角関係になるかと思わせるあたりもよかった。まあ実際の太宰治とはかなりキャラクターがちがうようにも思うがまあいいだろう。
またヒロインが音楽家を目指すこともあり、音楽がドラマに重要な役割を果たしているのも特徴だ。オープニングのインストゥルメンタルの旋律が、終盤ヒロインが子を思って作曲する楽曲の旋律と重なるのも効果的。最近の朝ドラはアーティストがオープニングテーマを歌うことが多いが、本作のような短いインストゥルメンタルのほうがよいかもしれない。