退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『彼奴を逃すな』(1956) / 東宝サスペンスの隠れた傑作

神保町シアターの《こわいはおもしろい ホラー!サスペンス!ミステリー! 恐怖と幻想のトラウマ劇場》で映画『彼奴を逃すな』(1956年、監督: 鈴木英夫)を鑑賞。サスペンス。白黒映画。

ラジオ修理屋を営む夫・哲雄(木村功)と、洋裁で家計を助ける妻・君子(津島恵子)は、線路沿いの商店街に小さな店を構えていた。まだ子どもはいないが仲むつまじい、この夫婦を事件が襲う。ある日の夕方、哲雄が店を閉めようとしたとき、向かいの不動産屋で殺人事件が起こり、殺人犯を目撃してしまう。主任刑事(志村喬)と部下(土屋嘉男)は聞き込みを始める。平凡でつつましく暮らす若い夫婦は次第に事件に巻き込まれていく……。

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まず中盤に出てくるクラリネットを吹くチンドン屋の顔が怖い。チンドン屋は見た目ぐらいは愛嬌がないとダメだろうと思うが、インパクトのあるシーンである。クラリネットの音色も効果的に使われていて見どころのひとつになっている。

終盤、目撃者を消すために客を装い店に押し入った殺人犯に夫婦が監禁される。犯人は貨物列車が通過するときの騒音にまぎれて発泡しようと待ち構える。その前に夫婦はなんとか外部に連絡をとろうとするクライマックスは実に緊迫感がある。サスペンス映画で鳴らした鈴木英夫監督の持ち味がよく出ている。

主人公夫婦は美男美女。そんな夫婦はいないだろと言いたくなるが、妻役の津島恵子がかわいいのは特筆できる。また事件を追う刑事役に志村喬や土屋嘉男が出演しているのも個人的にはポイントが高い。

映像はさすがに古いが、手を変え品を変えて恐怖を表現する演出はなかなかのもので、いま見ても楽しめる。東宝サスペンス映画の傑作。

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