政府が来年4月からの実施を目指す「高等教育無償化」について制度の方針が決まったようです。昨年末に出た政府の見解については、下記の文部科学省のサイトを参照してください。
この方針を基に具体的な制度案が、NHKの「時論公論」で取り上げられたていたので、これを参照して内容を見ていきます。
対象の学生は誰なのか?
「高等教育無償化」といっても国民全員が対象になるわけではありません。少子化対策が目的とされていて、対象となるのは、「住民税非課税世帯とそれに準ずる世帯」の学生です。
「それに準ずる」というのはわかりにくいかもしれません。我が家は対象になるのか気になる人もいるでしょう。詳細は「時論公論」に載っている図を参照していただくとして、低所得者層の後に控える中間所得者層と逆転しないように、接続をスムーズにするため所得に応じて段階的に支援が少なくなるしくみが組み込まれています。
「時論公論」で指摘しているように世帯の線引きが難題なのは間違いありません。どう線引きしても文句が出そうです。この案が妥当かわかりませんが、とりあえずやってみるしかないでしょう。
いくらもらえるのか?
まず気になるのは「で、いくらもらえるの?」ということでしょうが、これはかなり手厚い支援が受けられます。授業業等の減免と給付型奨学金がセットになっているのがミソです。
場合によって異なりますが、例えば、私立大学の通う自宅外生の場合、入学金に約26万円、授業料に約70万円、給付型奨学金に約91万円だそうです。返済の必要なし。かなり手厚いですね。
現在「奨学金地獄」で苦しんでいる人は納得できないかもしれませんが、これが社会の進歩というものでしょう。ちなみに財源は、今年10月に実施される予定の消費税率引き上げによる増税分の一部が充てられます。
対象となる高等教育機関は?
今回の案では、対象となる高等教育機関に、大学・短大・高専とともに専門学校が加わり、間口の広い制度になっています。ただし大幅な定員割れを起こしているところや、経営上の収支が赤字になるなど問題が確認された大学は対象外となります。
間口が広いのは一見よいことのようですが、教育機関も線引きしなくてもいいだろうかという疑問があります。
この制度で支援を受け続けるための要件には、入学後の成績も含まれています。難関国立大と地方のFランク大学や場末の専門学校を同列に扱っていいものかものか議論のあるところです。
この制度は機能するか?
この制度では、低所得者層の進学希望者がこれまでにないほど手厚い支援が受けらるしくみになっています。とくに給付型奨学金により、生活費も担保されているのが大きな特徴です。救われる学生も多いでしょう。
しかし一方で、どんな学校にでも進学すれば生活費が支給されるという「第2の生活保護」だと揶揄する声があるのも事実です。世間には大学とは名ばかりのFランク大学がたくさんありますが、この制度を悪用して学生を集めて利益を貪るという図がすぐに思い浮かびます。
やはり高等教育機関にも線引きが必要でしょう。国公立大学に加えて、上位私立大100校ぐらいが適当ではないでしょうか。かりにも「人づくり」を謳うならば、卒業後、社会に貢献できるのはこのあたりが限界でしょう。
大学の線引きは、大学の生き残りがかかっているので利権をめぐり喧々諤々になることが予想されます。しかし、大学にもしっかりと線引きをしてはじめて機能する制度になるのではないでしょうか。
いずれにせよ、これまでに比べて大きな前進です。関連法案は開会中の国会に提出される予定だそうです。国会での実のある議論が期待されます。