新文芸坐の《青春スターから円熟の演技者、そして監督へ 映画を生きた男 追悼・津川雅彦》で映画『次郎長三国志』(1963年、監督:マキノ雅弘)を鑑賞。1950年代にマキノ雅弘が監督した東宝版を、東映オールスターでセルフリメイクした次郎長モノの第1作。主演は鶴田浩二。
清水の米屋の倅・長五郎こと次郎長(鶴田浩二)のもとに、個性的な子分たちが集まり一家を構えるまでを描く。次郎長の恋女房・お蝶に佐久間良子、子分たちに松方弘樹、津川雅彦、山城新伍、大木実、田中春男が顔を揃える。お祭りのような第1作である。
テンポよく物語が展開して、娯楽時代劇として面白く見られる。ただし殺陣は時代がかっていたアクション要素は乏しく、ただただ穏やかに物語が流れていく。東映時代劇の黄金期を感じさせる余裕のある作品。
個人的には次郎長をはじめとする股旅モノにそれほど思い入れがないため、個性的な子分たちのキャラクターや、それに関連するエピソードがどうもピンとこない。最近の若い世代は忠臣蔵をよく知らないというから似たようなものだろうか。
肝心の津川雅彦は「増川の仙右衛門」役を演じていている。仙右衛門のせいで賭博で一家全員の衣服を失い、裸で街道を走っていくシーンで第1部が終わる。監督のマキノ雅弘は津川の叔父だというから津川にとっても大切な一本であったろう。追悼には外せない作品である。