新文芸坐の《青春スターから円熟の演技者、そして監督へ 映画を生きた男 追悼・津川雅彦》で映画『いれずみ突撃隊』(1964年、監督:石井輝男)を鑑賞。白黒映画。
南支の最前線に送り込まれたヤクザの衆木一等兵(高倉健)が古参兵や上官と衝突し、大暴れするという異色の戦争映画。翌年、本作と同じく石井輝男監督が撮った『網走番外地』の習作のようにも思える。
主人公が転属後のあいさつで背中の入れ墨を見せながら仁義を切るシーンから惹きつけられる。その後、同じく浅草のヤクザだった中隊長の安川中尉(杉浦直樹)と暗闇のなかタイマンを張り、意気投合するあたりも見どころか。杉浦直樹がかっこいい。肝心の津川雅彦は最年少の二等兵役。
のちに津川と結婚する朝丘雪路が慰安婦役で出演し、健さんとケンカしながらも互いに惹かれ合うヒロイン役を好演している。朝丘を通して津川を追悼するという映画とも言える。
慰安婦といえば、この映画で外出日に兵士たちが慰安所に我先にと走っていくシーンが印象的だった。「兵隊は死んだら靖国へ行けるけど私たちには行く所がない」という慰安婦の言葉も考えさせられる。この描写が史実なのか演出なのか分からないが、いまだに慰安婦問題がくすぶっていることを思うと、ついつい真面目にみてしまう。
終盤に向かうと登場人物が次々に戦死し、健さんもふんどし一丁になって爆薬を背負って特攻する。いわゆる全滅エンドである。続編への未練はないというのは潔いが、何だこれで終わりなのかという物足りなさが残った。
さてヤクザが軍隊で大暴れする映画と言えば、勝新太郎主演の『兵隊やくざ』(1965年、監督:増村保造)を思い出す。
こちらは大映映画が制作で、シリーズ化され第9作まで作られている。本作と比較しても仕方ないが、やはり『兵隊やくざ』シリーズでは田村高廣が演じたインテリの役割が大きく、ドラマにもっと幅があった。