退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『主戦場』(2019) / 慰安婦問題を扱ったドキュメンタリー映画

新文芸坐で映画『主戦場』(2019年、監督:ミキ・デザキ)を鑑賞。今年春に公開されて話題になった日本の慰安婦問題を扱ったドキュメンタリー映画

映画チラシ「主戦場」

正直、慰安婦問題についてそれほど関心があるわけではないが、最近の日韓関係悪化のメカニズムには興味がある。問題の根源をさぐれば日韓併合まで遡れるだろうし、日本の敗戦を経て、戦後の日韓基本条約の締結でいったん解決したはずだが、それ以降も慰安婦問題、徴用工問題などが蒸し返されてきた経緯がある。最近は日本の輸出規制強化、韓国の日本とのGSOMIA破棄など、いまだにネタが尽きない。

この映画を見ることで、日韓関係悪化の悪化の原因の一端に触れることができるのではないかと思い、映画館まで足を運んでみた。この手のドキュメンタリー映画は大きなスクリーンで見る意味は薄く、家でメモをとったりネットで調べ物をしたりしながら見るのがよいと思う。しかしテレビ放送される見込みもないし、DVDも出ていないようなので、このタイミングで見ておこう思ったわけだ。

この映画では、「強行連行はあったのか」「慰安婦は性奴隷だったのか」という問題を主に取り上げている。右派と左派という言い方が妥当かわからないが、そうしたテーマについて二項対立で問題を浮き彫りにしていく。まず、そうした構成に疑問に思った。慰安婦問題はもっとセンシティブな問題で慎重に扱うべきだろう。

知識人や文化人たちがインタビュー形式で出演して、一応ディベート形式のように進んでいくがフェアではなない。右派は一発撃つと、左派は百発ぐらい撃ち返してくるような印象がある。ドキュメンタリー映画で不偏不党というわけにはいかないだろうが、明らかに扱いが公平ではなく左派に偏っている。

監督が日系アメリカ人ということもあり、アメリカ国内の事情が詳しく紹介されている点は興味深い。カリフォルニア州のある都市に慰安婦像が建てるかどうかを議会で議論している様子が詳細に紹介されている。なぜ日韓問題がアメリカまで波及するのは謎だし、外務省は現地でやるべき仕事をしていたのか疑問だが、結局ラストにプロパガンダ慰安婦が建てられてしまう。


映画『主戦場』予告編

あと不思議だったのは、櫻井よしこケント・ギルバートなどの錚々たる右派の知識人・文化人がインタビューに応じて、結果としてプロパガンダに与していること。何やっているんですか、といいたい。

出演者の一部は「商業映画」に出演することは承諾していないと主張して、上映中止を求めて裁判沙汰になったとも聞いたがどうなったのだろうか。少なくとも今回はカネを取って上映しているわけで、上映差し止めは司法に認められなかったということだろうか。

全般的にかなり偏った内容でイライラすることも多いが、自分とは違った視点から慰安婦問題を見てみるのはよいトレーニングになるかもしれない。またDVDが出たら英語字幕で見ると、その分野の英語の勉強になるだろうということは付言しておきたい。

f:id:goldensnail:20191008074046j:plain