DVDで長編時代劇「闇の狩人」(2014年、監督:石原興)を鑑賞。CS局の時代劇専門チャンネルのオリジナル時代劇ドラマ。前後編の二部構成。原作は池波正太郎。
「鬼平」「剣客」「梅安」その魅力、ここに結集、という惹句が踊る。「鬼平犯科帳」「剣客商売」「仕掛人藤枝梅安」という池波正太郎の時代劇小説の美味しいをよりすぐった幕内弁当のような時代劇ドラマ。
中村梅雀、津川雅彦、福士誠治、風吹ジュンをはじめ、石橋蓮司、本田博太郎、鶴田忍、山口馬木也といった時代劇常連たち配役されていて安心感がある。これを松竹のスタッフが料理するのだからレベルは高い。ターゲットが時代劇専門チャンネルの視聴者なのだからヘンテコなものを出せるはずもないが……。
ストーリはいわゆる記憶喪失モノ。盗賊・雲津の弥平次(中村梅雀)は、上州と越後境の湯治場で、崖下に倒れていた一人の侍(福士誠治)を助ける。その若者は深い傷を負い、記憶を失っていた。自分の名前も思い出せない侍に、弥平次は、自分の名から一文字とって「谷川弥太郎」と名づける。数年後、弥平次は香具師の元締・五名の清右衛門(津川雅彦)に拾われ、仕掛人となっていた弥太郎と偶然再会するが……。
物語はこのように始まり、「鬼平」「剣客」「梅安」の要素をないまぜにしながらも弥平次の視点を中心に展開していく。いくらなんでも盛り込みすぎだろと思ったが、長尺なのでなんとか収まっている。それでも終盤はやや駆け足に思えた。
中村梅雀と津川雅彦は、いつもどおりというか安定しすぎていて想定内だったが、ターゲットを考えると冒険はできないのだろう。福士誠治は殺陣を器用にこなしていてちょっと驚いた。カッコいい。個人的な好みを言えば、福士誠治にもっとフォーカスして、武家社会の不条理をもっと描いてほしかった。
ラストは武士を捨てた弥太郎が、妻子とともに幸せに暮らすという無難な結末で拍子抜けした。こんな話だったかなと思ったが、時代劇ファンは気軽に見れる作品として満足できるだろう。