退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『仕掛人梅安』(1981) / 萬屋錦之介の梅安

新文芸坐の《洒落たタッチと円熟の演出【追悼】職人監督(プロフェッショナル)降旗康男》という企画で映画『仕掛人梅安』(1981年)を鑑賞。原作は池波正太郎による時代小説『仕掛人・藤枝梅安仕掛人・藤枝梅安』で、主演は萬屋錦之介東映映画。

f:id:goldensnail:20190727204319j:plainf:id:goldensnail:20190727154724j:plain

仕掛人梅安(萬屋錦之介)は、江戸の元締め・音羽屋(藤田進)から旗本の放蕩息子(中尾彬)の暗殺を依頼される。一方、旗本と深い縁のある大阪の元締め・近江屋(伊丹十三)は江戸への進出を図っていた。音羽屋と近江屋の暗闘が始まる……。

f:id:goldensnail:20190727154732j:plain

降旗康男監督は高倉健とのコンビで多くの作品を撮っているが、あえて高倉健出演作以外を選んでみた。本作撮影時、降旗はすでに東宝の『駅 STATION』のクランクインが決まっていて十分な時間が取れなかったとのこと。そのためか萬屋ならでは梅安のイメージが十分に練られていないようにも思える。先行したテレビ時代劇により、梅安と言えば緒形拳のイメージがあるが、それを払拭するだけのインパクトは感じられない。

それでも晩年近くの萬屋の貫禄は大変なものだし、梅安が表の稼業である鍼医者として市井の人たちに手厚い治療を施す様子が十分に描かれているのもよい。さらに伊丹十三小川真由美らの共演者たちに支えられて良質の娯楽時代劇に仕上がっている。

テレビ時代劇で見られた派手な演出とは対照的に、本作はハードボイルドのような落ち着いた演出がされている。個人的には悪くないと思うが、テレビ版に慣れた観客には物足りなかったかもしれない。興行的には芳しくなかったようだ。

f:id:goldensnail:20190727154729j:plain:w360