BSで放送された映画『江戸城大乱』(1991年、監督:舛田利雄)を鑑賞。かつて東映が製作して大ヒットした『柳生一族の陰謀』(1978年)の系譜に連なるトンデモ時代劇。良い子は史実だと思ってはいけません。昔の夢をもう一度というわけでもないだろうが、世の中はそう甘くはない。
徳川四代将軍・家綱の跡目争いをアクションを交えて描く時代劇。
病弱の家綱(金田賢一)に代わり、大老・酒井雅楽頭忠清(松方弘樹)が幕政を専横していた。酒井は嫡子のいない家綱の跡継ぎに甲府藩主・綱重(神田正輝)を推しており、江戸城にお連れするように若年寄・堀田備中守正俊(三浦友和)に命じる。一行が江戸に向かう途中、綱重は尾張藩の手勢により暗殺されてしまう。
一方、三代将軍家光の側室・桂昌院(十朱幸代)も実子である館林藩主・綱吉(坂上忍)の擁立を図っていた。そして綱重を失った酒井は、宮家から次期将軍を迎えることを画策するが家綱に拒否される。思い余った酒井は御殿医を使い家綱を暗殺したうえ、偽りの遺言をでっち上げる。
しかし家綱は「次期将軍は綱吉」という遺言を侍女に託していたため酒井の謀略が発覚し、綱吉が次期将軍に決まる。自らの敗北を悟った酒井は徳川への大逆を詫びて立ち腹を切る。
だいたいそんな次期将軍をめぐる権力闘争の話だが、映画は江戸城内の政治闘争とアクションのパートに大きく分けることができる。
政治闘争のパートでは、松方の大仰な芝居がひと際目立つ。これは『柳生一族の陰謀』の萬屋錦之介を彷彿させるが、影響を受けたのだろうか。幕閣や御三家には、加藤武、金子信雄、丹波哲郎、神山繁などの面々が連なりなかなか豪華。とくに尾張藩主を演じた金子信雄の狸じじいぶりは面白い。この並びに成田三樹夫がいないのが寂しいが、彼は前年既に没している。
一方のアクション・パートの主役を担うのは三浦友和。加えて西岡徳馬や平泉征が敵役という布陣で世代交代を実感できる。悪くはないが、若山富三郎や千葉真一が活躍していた当時と比べるとやはり線が細い印象が拭えない。
シナリオも悪くないし、アクションもそれなりに金がかかっているのだが、映画としてはあまり面白くない。松方弘樹の強烈な芝居を受けきれる俳優がいなかったのが敗因だろうか。DVDも出ていない模様。
余談だが、映画のなかの江戸城天守が焼け落ちるシーンが印象的だが、これは回想であり今回の跡目争いの結果ではない。「釣られた」と思ったが、調べてみると天守は明暦の大火(1657)で焼失しており、綱吉が将軍に就いたのは1680年のことなので少し時代がずれていることがわかる。