小山ゆうの代表作と言える、コミック『あずみ』(全48巻)を読了。今年夏、続編である幕末を舞台とした『AZUMI -あずみ-』を読み、前作も読みたくなり読み始めるも、さすがに長い……。本作は1994年から2008年にかけて『ビッグコミックスペリオール』(小学館)に連載された。
本作の舞台は江戸幕府初期。泰平の世を作り上げるため、内乱の芽を摘む暗殺集団の一人として「爺」(小幡月斎)に育てられた少女・あずみの戦いを描く。凄腕の女刺客あずみの物語である。
ずいぶん前に一度読んだことがあるが断片的にしか憶えてなかった。しかし記憶とは不思議なもので、読み進めていくうちに、かなりの部分を覚えているものだなと自分ながら驚いた。登場人物では、雪国の死闘篇の双子の静音と忠音、そして人ではないが終盤に登場する「へんな馬」がとくに記憶に残っていた。
これ以外にも、おびただしい数の登場人物があずみの側を通り抜ける。長期にわたる連載マンガなので、本来ならば何年もの時間をかけてじっくり読むマンガなのだろうが、今回短時間で一気に読んだせいで、凄まじい勢いでキャラクターが登場して、すぐに消えていく。もったいない読み方だったのかもしれない。
本作は、幕末編『AZUMI -あずみ-』とくらべて、刺客としての成長過程がきちんと描かれている点が優れているように思う。尺が長いだけに登場人物の人物描写がじっくりできている。またコンプライアンスが緩かったのか、あずみの裸体を多めに登場するのもよい。
本作は唐突に「第1部・完」となるが、欲を言えば家光と忠長との確執まで物語を進めてほしかった。萬屋錦之介主演『柳生一族の陰謀』(1978年、監督:深作欣二)で取り上げられた、兄弟の確執を「あずみ」で読みたかった。
いずれにしろ、小山ゆうの長編のアクション時代劇を堪能させてもらった。