退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【読書感想】枡野惠也『人生をはみ出す技術』(日経BP社、2017年)

筆者は、東大法学部からマッキンゼーに進み、何度かの転職を経てパンツブランドの社長に転身したユニークな経営者。カバーにあった筆者近影のカイゼル髭インパクトがあるし、社長として全社員の前でパンツ1枚になるらしい。

この本では「はみ出す」とは、ほかの人と違う選択をすることといい、「はみ出す」ことが合理的な社会になりつつあるという。まあ凡人が本書の内容をそのまま鵜呑みにできるわけでもないだろうが、いくつか参考になった点を挙げてみる。

「はみ出す」ことを推すのは、人間の寿命が伸びていることが要因であり、日本でもリンダ・グラットン『LIFE SHIFT』がベストセラーになっているように、誰でもキャリアの「ピボット」が求められる時代になりつつあるという指摘は重要だ。「自分の人生をコントールする」という意識が必要だというのは腑に落ちる。

また「はみ出す」と言っても、やみくもにキャリアを模索すればいいわけはない。筆者もパンツ社長に就く際に、いくつかのオファーのなかからリスク分析をして進路を決めているあたりは参考になるだろう。

巻末近くに「生きる意味を問う」というセクションがある。「この世に価値なんてない」ということを前向きにとらえて、だから一瞬一瞬をがんばって生きようと考えることを、「積極的なニヒリズム」と呼んでいるのはちょっといいと思った。

余談だが、筆者のパンツブランドはTOOTをいい、商品はここから参照できる。男性用下着としては結構な値段がするが市場の将来性あるのだろうか。そんなことを思いながら読了した。

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