タイトルに惹かれて読んでみた。売れているらしい。
- 作者:樋口 耕太郎
- 発売日: 2020/06/16
- メディア: 新書
前半は、なるほどと膝を打ちながら読んだ。オリオンビール身売りの経緯や、米軍基地返還後の街並みがなぜ冴えないのかという問題に対する分析は読み応えがあり有用だった。
その後、沖縄の人たちの自尊心の欠如という話になるとやや首を傾げたくなる。筆者の現地での体験から、沖縄の人にそうした気質があると感じるのは自然なことだろう。しかし貧困の根本原因をそこに求めるのはかなり飛躍があるのではないか。さらに「愛」がどうだとか言い出すに至っては宗教じみたモノすら感じてしまった。
沖縄における貧困の原因を、沖縄社会の性質や住民の気質にあるとするのは、社会学には興味深いのだが、もう少し経済学的なアプローチは期待していたので期待はずれだった。結局、すべては個人的な体験に基づいた仮説に過ぎないのではないか思いながら読んだ。
余談だが、ビジネスエリートである筆者が、せっかく再建してホテルの社長を解雇されたうえ、離婚してすべてを失った、という個人的な体験の方に興味が湧いた。沖縄のことより、波乱万丈の筆者の人生の方がすごい。半生記を書いてくれないかなと思いながら読了した。