大林宣彦監督への追悼を込めて、DVDで映画『さびしんぼう』(1985年、監督:大林宣彦)を鑑賞。瀬戸内の尾道を舞台に、少年の恋をノスタルジックに描いたファンタジー作品。ヒロインは富田靖子。ショパンの『別れの歌』が全編を通して効果的に使われている。
舞台は瀬戸内の尾道。主人公ヒロキ(尾美としのり)は、寺のひとり息子。母(藤田弓子)はやたらと口やかましく閉口していた。カメラを趣味にしていたヒロキは、近くの女子校の美少女(富田靖子)に恋心を抱いていた。ある日、「さびしんぼう」と名乗る変な女の子(富田靖子)に出会い、物語は急展開していく……。
Sabishinbou 「さびしんぼう」 - 1985 - Trailer 予告編
情緒的なファンタジーで泣かせる映画であるが、センスに欠けるギャグパートは今見ると寒々しい。大林監督らしいとも言える演出だが少し忍耐が必要かもしれない。秋川リサや浦辺粂子の扱いが結構ひどい。
富田靖子が中年になると藤田弓子になるのは驚き。近親相姦とも言えるテーマだが、監督の性癖とというか自伝的な要素も含まれているのだろうか。
富田靖子は、典型的な美少女と白塗りの「さびしんぼう」を好演していて、将来の大物女優の片鱗を覗かせている。儚い存在がうまく表現されていて適役である。DVDのジャケットはセーラー服姿の富田靖子だったが、このスチルは傑作で実にうまく撮れている。いまの彼女を思い浮かべると「女性は儚いなぁ」などと思ってしまう。
公開時のエンディングは富田靖子が歌う「さびしんぼう」が流れたが、DVDではオリジナル版のエンディングが収録されていた。エンドロールの映像も美しい尾道の情景が使われている。劇場版のエンディングはアミューズの意向だったのだろうか。
DVDには劇場版のエンディングも特典映像として収録されていて、どちらも楽しめるようになっていた。こういうのはDVDならでは楽しみであり、映画館やストリーミングだとこうはいかない。まだまだパッケージソフトの強みは残っている。