東京国立近代美術館フィルムセンターの《自選シリーズ 現代日本の映画監督6 石井岳龍》で映画『狂い咲きサンダーロード』(1980年)を鑑賞。石井聰亙(現・石井岳龍)監督の日芸の卒業制作作品だった。学生映画にもかかわらず全国公開された伝説のカルトムービー。
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暴走族の内部抗争、そして彼らを利用しようとする極右団体に一人で戦いを挑む青年(山田辰夫)が描かれる。若さと素人らしさがスクリーンに炸裂している、やたらと「勢い」のある映画。当時の泉谷しげるや頭脳警察などの音楽に乗って、終盤にかけてスピードアップしていく流れは見事。いまでも賞賛する人がいるのは納得できる。
ただし、私がおっさんになったこともあるが、不良とかツッパリにはまったく共感できない。いま見るべき映画ではなかったのかもしれない。若い頃に見れば評価は違うだろとも言われるが、学生時代からツッパリ映画は苦手だったので見る人を選ぶかもしれない。
それでも俳優としての山田辰夫の演技は素晴らしい。彼を見るだけでもこの映画を見る価値はある。加えて右翼団体の幹部を演じた小林稔侍が想定外によかった。ホモ設定は必要だったのかとも思うが、なかなかカッコいい。この路線で個性派俳優として活躍してほしかったと思うほどだ。
ただし必要以上に音量が大きかったのは気になった。ロックが鳴り響くシーンではそれでもいいのだが、セリフの音が割れて聞き取りにくいのには閉口した。ストーリーはどうでもいい映画なので、これもアリなのかもしれないが、一手間かけて音声を補正すれば見やすくなるだろう。
音が大きいことについては、会場にこんな掲示があった。演出だから仕方ないが、フィルムセンターらしからぬ劣悪な上映環境だった。「了承してください」と言われても、了承できないなぁ……。
余談だが、久しぶりにフィルムセンターに行ったら整理券を配布するようになっていた。システムが変わったのは知っていたが便利になった。アンケートに何度か整理券配布してほしいと書いたのがようやく実現された。これでロビーで長々と待つ必要はなくなった。めでたしめでたし。