退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『テキヤの石松』(1976) / 松方弘樹主演の珍しい喜劇映画。范文雀がよかった

新文芸坐松方弘樹追悼企画《「無冠の男 松方弘樹伝」刊行記念 追悼 松方弘樹 演じた! 作った! 撮った! 映画をこよなく愛した最後のスター》で、『テキヤの石松』(1976年、監督:小沢茂弘)を鑑賞。松方が短気で早とちりのテキ屋を演じた人情喜劇映画。初見。

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仁義なき戦い」シリーズなどの強面のイメージが強い松方が、大阪を本拠地に活動するテキ屋を演じた珍しい作品。後年、テレビのバラエティーで見せる陽気なキャラクターが垣間見えるが、映画で喜劇を演じるはちょっと勝手が違ったようだ。イマイチ突き抜けてない。

キャンピングカーで移動しながら営業をするテキ屋というのは、「トラック野郎」みたいでもあり、「男はつらいよ」みたいでもあり、実際はどうだったのはわからないが何やら安直な企画にも思える。どうせなら鈴木則文に撮ってほしかったかもしれない。

吉本興業のバックアップのもと、笑福亭仁鶴岡八郎桂三枝といった大阪喜劇人が大挙出演しているが、芸人たちが美味しいところを次々とさらっていき、主演の松方の影が薄く感じる。さすが本職。終盤、敵焼きをペテンにかけて大金を巻き上げるあたりは、松方はトランシーバーで指示してるだけだからなぁ……。

それでも、いつもはヒーロー然としている松方が。大学時代にボクシングのチャンピオンだったいう敵役の名和宏にボコボコにされるシーンは貴重。これは見逃せない。まあ、ラストで名和にきっちり仕返しするのだが、このシーンも痛快。

あと私が気に入ったのは、松方に惚れて追い回す花子役の范文雀。劇中で松方は清純派の檀ふみに惚れて彼女の窮地を救うが最後は振られるという寅さん的な役回りだった。いま見ると檀ふみより范文雀の方が断然いい。いまにも通用するいい女。