渋谷で開催中の「ボッティチェリとルネサンス」展を見てきました。サンドロ・ボッティチェリ(1445-1510年)の作品を中心に、金融業で栄華を誇ったルネサンス期のフィレンツェに生まれた芸術を紹介する展覧会です。
Bunkamuraザ・ミュージアム 『ボッティチェリとルネサンス』展 - YouTube
ボッティチェリと言っても代表作の《ヴィーナスの誕生》や《プリマヴェーラ》は来ないし、当初、これはスルーかなと思っていました。しかし、偶然、ヤマザキマリの自伝『国境のない生き方』で作者が単身フィレンツェに渡った話を読んで、「そういえばボッティチェリ来てるよね」と思い出しので、足を運んでみました。
この展覧会には「フィレンツェの富と美」という副題が付いていて、フィレンツェおよびメディチ家の資金力がルネサンス芸術の誕生には欠かせなかったことを紹介します。当時の金貨から展示が始まるのも象徴的です。そしてフィレンツェの衰退とともに、ボッティチェリの作品の輝きを失い晩年は淋しいものだったそうです。フィレンツェと運命をともした画家というストーリー性があるところが本展の美点です。
最大のみどころは、横幅5メートルにも及ぶフレスコ画《受胎告知》でしょうか。大作に圧倒されます。チケットにも採用されています。
そして終盤には、ドミニコ会修道士のサヴォナローラの肖像(ボッティチェリ作でない)があります。彼は贅沢品や宗教上好ましくない芸術作品が燃やした「虚栄の焼却」で知られていまが、なんとももったいない。そして、これまでルネサンス芸術を支えてきたメディチ家は凋落して、ついにはフィレンツェを追われてしまします。
意外にもボッティチェリもサヴォナローラに傾倒していたとのこと。そうした時代を繁栄したのかボッティチェリ晩年の作品はパッとしません。そして活気を失ったフィレンツェではルネサンスは終息に向います。
ちなみに音声ガイドのナビゲーターは城田優でした。なんか一曲謳ってくれてもよいものを……。