【映画感想】『濹東綺譚』(1960) / 永井荷風の代表作を山本富士子主演で映画化

新文芸坐の《艶と凛 大映に咲いたふたつの名花 京マチ子と山本富士子》で、映画『濹東綺譚』(1960年、監督：豊田四郎)を鑑賞。永井荷風の同名小説の映画化。荷風の没後1周年記念で映画化されたという。

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ヒロインの玉の井の娼婦・お雪を演じるのは山本富士子だが、本作は大映映画ではなく東京映画製作で東宝により配給された。

山本富士子はもちろん美しい。まあ芥川比呂志でなくても通い詰めて、退職金を投じて二人の新しい生活を考えても不思議ではない。しかし山本はどうしても上品さが透けて見えてしまう。こんな場末にいる玉じゃないだろうと。

この点では、新藤兼人監督が1992年に映画化の際に、お雪を演じた墨田ユキのほうが適役に思える。思い切りよく脱いでいることも加点したい。

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本作は白黒映画だが、玉の井のセットがよくできている。もちろん当時の様子を知るべくもないが雰囲気が出ているように思える。また原作を一節を芥川比呂志が読み上げることで物語が進んでいくのは趣きがある。