退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『黒蜥蜴』(1962) / 女盗賊・京マチ子がムチでビシビシ!

新文芸坐の《艶と凛 大映に咲いたふたつの名花 京マチ子山本富士子》で、映画『黒蜥蜴』(1962年、監督:井上梅次 )を見てきた。原作はもちろん江戸川乱歩

原作は何度も映像化されていて、映画では丸山明宏(現・美輪明宏)版(1968年)が知られているが、私は今回見た京マチ子版の方がカルトムービー的な雰囲気があって好きだ。本作はもちろん大映作品だが、新東宝かと思わせる異色作。

スタッフが異様に豪華なことにも注目したい。原作戯曲:三島由紀夫。脚本:新藤兼人。音楽:黛敏郎。すごすぎます。しかも三島は主題歌「黒蜥蜴の歌」の作詞まで手がけている。何があったんだろう。いまでは考えれないB級娯楽映画に仕上がっている。
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さて映画だが、美しいものを狙う美貌の女盗賊「黒蜥蜴」(京マチ子)と名探偵・明智小五郎大木実)の対決が描かれる。アバンタイトルから京マチ子の魅力全開だ。京マチ子が「黒蜥蜴」を演じるキャスティングが絶妙。彼女もよく受けたなものだだと思うが……。

助演では、ヒロイン(叶順子)の父親の宝石商を演じた三島雅夫の演技がすごかった。「がははは」と何でも一笑に付すのがすごい。計算上の演技なのか定かではないが、作品に妙にマッチしているようで面白かった。

またミュージカル仕立てで京マチ子の男装やダンスも見ることができるのもこの映画の魅力。随分前にこの映画を見た時、宝塚歌劇団でやればいいのにと思っていたら、2007年に宝塚歌劇団花組公演 『明智小五郎の事件簿―黒蜥蜴』として実現したときは、我が意を得たりと思ったものだ。ちなみに「黒蜥蜴」は桜乃彩音が、明智小五郎春野寿美礼が演じていた。

この映画はサスペンスとしてはかなり雑なところもあるが、細かいことは忘れて作品に没入して楽しむのがいいだろう。いまの日本映画では出せないテイストが満載で楽しい。

今回調べてみると、DVDが発売されていた。ジャケットはイマイチな気がするが、このカルト映画がソフト化されていたのには驚いた。この手のカルト映画は、いまはなき自由が丘武蔵野館で見たものだったが、簡単にソフトが入手できるとはいい時代になったものだ。

黒蜥蜴 [DVD]

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