退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『KAMIKAZE TAXI』(1995) / 役所広司がタクシーを運転してケーナ吹いてます

新文芸坐で『KAMIKAZE TAXI〈インターナショナル・バージョン〉』(1995年、監督:原田眞人)を鑑賞。《キネマ旬報創刊95周年「オールタイム・ベスト映画遺産 日本映画男優・女優100」刊行記念 日本映画史に輝く綺羅星たち・男優編》という企画のなかの一本。

恋人を自分が属する組織に殺されてしまったチンピラ・達男(高橋和也)が、組織を裏切り仲間とともにその組織とつながる悪徳政治家から隠し金・2億円を強奪する。しかし、あっさり裏切りがバレて仲間たちは全員始末される。達男は逃走中、偶然出会った日系ペルー人(役所広司)のタクシーでチャーターし、ひとり組織と政治家に復讐することを誓う。

役所広司は日本に出稼ぎに来ている日系ペルー人のタクシー運転手。南米ではゲリラ戦の経験があり、ヤクザよりも凄みがあるという役どころ。彼のたどたどしい日本語に味がある。また逃走中に達男との友情が育まれていく過程もすばらしい。

この映画が役者たちが輝いている。主演の役所広司高橋和也もいいが、組長のアニマル(ミッキー・カーチス)の怪演や、途中から二人の逃避行に合流する片岡礼子の存在感も特筆できる。片岡礼子がストーリーとは関係なく脱いでいるところも少し加点したい。

また達男の兄貴分のインテリヤクザ矢島健一)もよかった。達男に殺される前に「俺は立教出てんだぜ。その俺が……」と愚痴るシーンが劇場で大ウケだった。池袋という立地のせいだろうか。楽しい。

今回は〈インターナショナル・バージョン〉というバージョンで、フランス語と英語の字幕付きで、ついつい字幕を追ってしまうので疲れた。上映時間は140分。これでもかなり長いが、さらに長い169分のバージョンもあるらしい。どうせなら長いバージョンで見たかった。まあ今回でももっと短くできるだろうと思ったが、そうなると作品の持ち味が損なわれてしまうのかもしれない。

本作は上映される機会がない作品だろうが、数ある役所広司主演作からこれを選ぶのはなかなかの目利きというべきか。この映画から20年、すっかり大物役者になった役所だが、今後もインディーズに出てほしいなと思った一本だった。

DVD『KAMIKAZE TAXI』トレーラー - YouTube