DVDで映画『EUREKA』(2000年)を鑑賞。先月亡くなった青山真治監督の代表作。上映時間217分の大長編映画。
九州で起きたバスジャック事件によって、心に深い傷を負った運転手の沢井(役所広司)、中学生の直樹(宮崎将)と小学生の梢(宮崎あおい)の兄妹、そして兄妹の従兄弟・秋彦(斉藤陽一郎)を加えた四人は共同生活を始める。彼らの周囲で連続殺人事件が起こり、沢井にも疑いの目が向けられる・やがて彼らは人生の再生をかけた旅に出るが……。
奇しくも同じ西鉄バスで起こったバスジャック事件を追いかけた映画と思われがちだが、実は事件は撮影後に起こっている。
長尺だが物語自体は単純である。このバスジャック事件でトラウマを負った人たちがいっしょに暮らし始めるのもヒネリはないし、連続殺人事件も謎解きはなくすぐに犯人がわかってしまう。このような単純すぎる物語で直截的にテーマを扱っているのに傑作に仕上がっているのが、この映画のすごいところだろう。
見始めて最初に気がつくのはセピア調のモノクロームな色調。モノクロームで撮影したフィルムをカラー・ポジにプリントする「クロマティックB&W」という独自の手法で撮られている。さらにシネマスコープ・サイズの画角を活かした映像がすばらしい。
モノクロームのまま映画が終わるかと思ったが、登場人物が人生を取り戻した瞬間に色彩が戻りカラー映像になる。最初見たときも「これダサいな」と思ったが、今回もやはりモノクロームのままでよかったのではないか、と思ってしまう。
出演者では、やはり宮崎あおいの存在感が秀でている。後に大河ドラマで主演するなど大成するわけだが、その片鱗を否が応でも感じさせる。
青山真治監督への追悼の思いを込めて見直してみた。長編の白黒映画なのでちょっとだけ勇気が必要だった。未見の人はぜひ一度見てほしい。日本映画にもこんな素晴らしい映画があったのだと驚くことだろう。