退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『連合艦隊司令長官 山本五十六』(1968) / 山本五十六といえばやはり三船敏郎

新文芸坐の《「三船敏郎、この10本」刊行記念 永遠の映画スター 三船敏郎 没後20年/映画デビュー70年記念上映会》という企画上映で、映画『連合艦隊司令長官 山本五十六』(1968年、監督:丸山誠治)を鑑賞。東宝の8・15シリーズの第2作。

太平洋戦争開戦時の連合艦隊司令長官であった山本五十六を描いた戦争映画の大作。日米開戦に反対しながらも、いざ開戦となれば早期講和の手段として短期決戦を決意、ハワイ真珠湾攻撃を立案するが……。

冒頭、山本五十六が川舟で逆立ちする場面ががある。最初から山本の人物像を打ち出す見事な演出で、思わず惹きつけられる。好きなシーンである。ちなみに船頭は辰巳柳太郎。終盤、山本が船頭の息子と戦地で出会う場面があるのでお見逃しなく。

これまでの東宝特撮の集大成といえる作品だが、これまでの映画からの引用も目立つ。今回の三船敏郎特集で数日前に見た映画『ハワイ・ミッドウェイ大海空戦 太平洋の嵐』(1960年)で使われた映像が上映されるとさすがに「このシーンはこの前見たよ」と思ったものだ。


連合艦隊司令長官山本五十六

本作のみどころは海軍甲事件。山本五十六ブーゲンビル島の前線基地に向かう途中で、搭乗していた一式陸上攻撃機が、アメリカ陸軍航空隊のP-38ライトニングに撃墜され戦死するという事件である。ドラマとしても長官が自ら死地に赴くかのような悲壮感がよく出ているし、空中戦の機銃座から敵戦闘機が見えるあたりの特撮もよくできている。

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三船敏郎は、本作で初めて山本五十六を演じているが、劇映画では山本五十六を都合三度演じている。山本五十六といば三船敏郎のイメージがすっかりできてしまった。最近の『聯合艦隊司令長官 山本五十六』(2011年、監督:成島出)では、役所広司山本五十六を演じている。映画は悪くなかったが、やっぱり山本五十六はコレジャナイな思った。

さてミッドウェー海戦大敗以後、戦況が悪化すると山本は死に場所を求めるかのような行動をとり、映画でも従卒にそれを指摘されるあたりは胸を打つ。それでもいま考えれば、ずいぶんと無責任だなと思ってしまう。山本が戦死したのは1943年4月だが、そのあと敗戦までどれだけの命が失われただろうか。何が何でも生き延びて「もっとマシな日本の負け方」について尽力してほしかったなと思わざるを得ない。