DVDで映画『太平洋奇跡の作戦 キスカ』(1965年、監督:丸山誠治)を鑑賞。主演は三船敏郎。白黒映画。
1943年に日本海軍によって実施されたキスカ島撤退作戦を題材にした戦争映画。同年、アリューシャン列島のアッツ島守備隊が玉砕。同列島のアッツ島守備隊も、連日にわたり米軍の猛攻を受け、補給も撤退もままならず玉砕を待つばかりという状況にあった。しかし海軍軍令部は川島中将(山村聡)の進言を受け入れ、キスカ島守備隊5000人を救出することを決める。実行部隊の指揮官に大村少将(三船敏郎)が指名される……。
キスカ島の位置は下のとおり。南方が主戦場に移り、アッツ島やキスカ島には戦略上の意味はない、と海軍首脳部が言う場面があるが、やっぱりそうなのかと思った。あんなところに遊兵を置いておいては話にならない。それでも米領の一部を占領されていると米国民の士気にかかわるということはあったようだが。
カムチャッカ半島の南部に位置する幌筵から出撃した艦隊が、霧のなか島に侵入して守備隊の兵員を乗せて、反転・帰投するという撤退戦なので派手な戦闘はない。戦争映画としては地味で異色作といえる。
太平洋戦争中盤以降の数少ない成功した作戦を基にしているので、観客はあらかじめ作戦成功がわかっていて見るせいか、戦争映画にしては明るい雰囲気で、ちゃんとハッピーエンドになるのも後味がいい。東宝オールスター出演の映画なのにヒロイン不在なのも珍しい。
安心できるストーリーラインを支える円谷英二の特撮も素晴らしい。いまのCGを使った映像とはまったくちがうが、霧のなかを進む艦隊のミニチュア特撮がスクリーンに映える。昔、見たときは白黒でやや物足りないと感じたが、今回は白黒映像にも味があるかもと思った。
DVDの特典映像に、キスカ島の守備隊にいてこの作戦で撤退した人のインタビューが収録されていた。この映画にアドバイスしていたそうで、監督と並んだ写真があった。キスカ島から帰還した後、その人は当時の最新鋭空母「大鳳」の搭乗員になったそうだ。この空母は撃沈されたがやはり生き残っている。いやはやすごい人生である。
映画制作当時には、まだまだ戦争経験者がいて実体験に基づく助言をもらえただろうし、出演者にも軍隊経験者がいただろう。この頃の東宝の戦争映画には独特の味わいがある。