退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

寺田ヒロオ「カーブくん ドロップくん」との再会 @豊島区立中央図書館

先日、市川準監督の映画『トキワ荘の青春』(1996年)を見た。この映画は、本木雅弘が演じる漫画家・寺田ヒロオを主人公にした、著名な漫画家たちが住んでいたことで知られるトキワ荘を舞台にした青春映画。

そのとき私と寺田ヒロオとは接点はなさそうだと思っていが、実は小学館学年誌に連載されていた「カーブくん ドロップくん」(1971年)という少年野球漫画を熱心に読んでいたことを思い出した。学年誌の連載漫画などは、よほどの大御所でもない限り目にする機会はないだろうと半ば諦めていた。

寺田はトキワ荘の住人としては有名であったが作品自体は顧みられることが少なく、作品にアクセスしにくい幻の作家とされていたが、21世紀になって全集が出ていたのに驚いた。目当ての「カーブくん ドロップくん」は、寺田の代表作である「背番号0〔野球少年版後編〕」のなかの一冊に収録されていた。

カーリルで検索すると豊島区立中央図書館に蔵書があることがわかった。しかも禁帯出扱いになっているいるので借り出されている心配はない。そこで近くまで行ったついでに立ち寄ってみた。有楽町線東池袋駅近くの高層ビルの4・5階。大きな吹き抜けのある開放的な図書館だったが、もっと床面積を稼いだ方がいいのではとも思ったが、他所の図書館なのでまあ措いておこう。

目当ての本は「トキワ荘」のコーナーにあった。豊島区にあったトキワ荘に住んでいた漫画家たちの著作がずらりと揃っている。それぞれの漫画家が住んでいた期間を示すパネルもあった。禁帯出なので本の状態もいい。

さっそく目当ての本を手にとって読もうとしたが、読む場所が近くにない。せっかく「トキワ荘」コーナーがもったいない。コーナーの近くに気軽に漫画を読めるスペースがほしい。仕方ないので読む場所を探してフラフラと歩いていくと、赤本で勉強していた受験生のとなりのカウンター席が開いていたので、やっとそこで読むことができた。

昔の小学生向けの漫画なので他愛もない話だ。カーブが得意なチビのカーブくんとドロップが得意なドロップくんが少年野球で活躍するなかで友情が育まれるというストーリー。いま読むとがっかりするかもと心配だったが、数十年ぶりに楽しくそして懐かしく読めた。

ただし、漫画の線にジャギーが目立っていてちょっと印刷の質が残念。本のただし書きにあるように、原稿が失われて掲載誌や刷り上がり見本などから復刻したものなのだろう。それでも寺田ヒロオの作品を現代に復刻した功績は大きい。グッドジョブといいたい。

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