退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『WOOD JOB!〜神去なあなあ日常〜』(2014)

目黒シネマで、映画『WOOD JOB!〜神去なあなあ日常〜』(2014年、監督:矢口史靖)を見てきた。原作は三浦しをんの小説『神去なあなあ日常』。劇場に笑いが溢れる映画は久しぶり。ドカンドカンとウケてました。

大学受験に失敗した平野勇気(染谷将太)は、林業研修生募集のパンフレットの表紙に載っていた直紀(長澤まさみ)の写真に釣られて、都会から離れて林業に従事することになる。危険と隣り合わせの重労働の苛酷さに挫折しつつも、さまざまな体験を重ねて徐々に林業の魅力に目覚めていくという青年の成長譚。

この映画の魅力は、観客にとっての非日常である「林業」を魅力たっぷりに紹介していくことだろう。とくに、今切り倒した木は自分たちの祖先が植えたものであり、今植えた木を切り倒すのは自分たちの子孫であるという世代を越える営みが、せわしない生活に追われる現代人のは新鮮だ。

林業は世代を越えるような長いスパンで考えなければならないことを示すことで、一見シモネタに思えるラストの奇祭が不自然に見えないところがポイント。そのため男根を思わせる木材を山の上から滑り落とす、子孫繁栄を願う架空の奇祭が不思議と説得力を持っている。しかし絵的にアレを地上波で放送できるのか疑問はあるが……。まあTBSが出資しているから大丈夫なのだろう。

映像的な見どころのひとつに、曾祖父の世代に植えた百年杉を伐採するシーンがある。勇気のメンターである与喜(伊藤英明)が、ずっと林業をやっているような貫禄でチェーンソーで実際に切り倒す場面は圧巻。やはりホンモノは見応えがある。

また出演者では上に述べた伊藤英明に注目したい。林業が本当に板についている。海猿で知られた伊藤は、本作でも高い身体能力を見せている。軽トラックに向かって遠くから走ってきて飛び乗るシーンをワンカットで撮っている場面は必見。

ただ映画としての難点もある。勇気と直紀の関係がうまく描けていないし、直紀が結婚を考えていたが村から逃げ出した元カレのエピソードも回収されない。つまり恋愛がうまく描けていない。他にも都会から来た「スローフード研究会」の振る舞いは、あまりにステレオタイプに過ぎるだろう。

とは言うものの、本作にはこうした難点を補って余りある魅力がある。進路に悩む若い世代に見てほしい映画である。


映画「WOOD JOB!(ウッジョブ)〜神去なあなあ日常〜」予告

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