目黒シネマで映画『テルマエ・ロマエ II』(2014年、監督:武内英樹)を鑑賞。ヤマザキマリ原作のコミックの映画化だが、映画独自のストーリーが展開される。
前作の「 I」は、「 II」の公開時のプロモーションでHuluで配信されていたのを見た。日本映画にしてはローマの街並みを再現したオープンセットが分不相応に豪華だった印象がある。内容は期待値が高くないこともあり、まずます楽しめた。
そして「 I」の興行成績が良かったので「二匹目のドジョウ」を狙って「 II」をつくってみましたとという続編が本作である。設定などは前作をほぼ踏襲した作品になっている。
この映画の肝は主人公の浴場設計技師ルシウスを演じる阿部寛の存在だろう。本来はルシウスは古代ローマ人なので海外からスターを招かないと成立しない映画なのだが、阿部寛を含め古代ローマ人の主要キャラを濃い顔の日本人が演じるという発想がすごい。
とくに阿部寛はビルドアップして体を作り込んできているし、彼一流のコメディアンのセンスもあり、なんとか映画として成立させてしまうのは驚きだ。余人をもって代え難しというところだ。でも、古代ローマ人はボディービルダーじゃないじゃよね、と思わなくもないが。
ストーリーは前作と同様に、ルシウスが現代日本にタイムスリップするたびに、日本で見たものを吸収して、それを古代ローマで浴場設計に活かすというパターンに繰り返しで、すぐに飽きてしまう。相撲まで取り込んでしまう貪欲さはアリかもしれないが、アイディア勝負なのはつらい。
本作では、次期皇帝候補・ケイオニウス(北村一輝)のニセモノが登場したり、上戸彩とのロマンスを絡めたりしているが、長編映画としてのストーリーに膨らみがない。そもそも上戸彩の立ち位置が中途半端だ。現代日本と古代ローマとの架け橋は必要なのは分かるが、ルシウスとの恋の扱いがぞんざいなのが残念だ。
そもそも、古代ローマと現代日本との文化のギャップを題材にするのならば、日本からローマへの一方的な流れなのが不満だ。映画では、ローマをリスペクトしたうえで古代ローマ文化の輝きを見たかった。上戸彩がローマ帝国のウンチクを語りまくるという展開があってもよいだろう。
この映画では水流に任せて時空をトリップするが、同様に映画に身を任せて楽しむのがよいだろう。深く考えないのがコツかもしれない。