退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

小山ゆうのコミック『AZUMI -あずみ-』を読了

幕末を舞台に凄腕の女刺客あずみの活躍を描いた、小山ゆうのコミック『AZUMI -あずみ-』(全18巻)を読み終わった。ビッグコミックスペリオール』(小学館)にて、2009年から2014年まで連載された作品で、小山ゆうの代表作である漫画『あずみ』の続編にあたる。

舞台は江戸時代初期であった前作に対して幕末へと変わっている。主人公・あずみは、前作の主人公をよく似ているが当然別人であり、ストーリーもつながりがない。

女刺客・あずみとその双子の兄妹で御家人の向駿介の二人を通して、幕末の動乱を描く構成である。冒頭、桜田門外の変大老井伊直弼を女刺客「あずみ」が討ち取る場面から始まり、掴みは十分。その後も幕末の有名人物が次々に登場して、幕末ファンにとってはうれしい内容になっている。ついにはあずみが坂本龍馬を暗殺するかどうかという話になる……。

前作同様、卓越した武術で敵を次々に倒していくあたりは活劇として面白い。しかし物語としては後半駆け足になって慌ただしいし、どうしても幕末の出来事にあずみの行動を当てはめているようなご都合主義を感じてしまう。

それでも途中に維新を経て駿介が明治政府の高官として大成している様子が挿入されているのは映画的でいい演出だと思ったし、ラストにあずみがどこともなく姿を消すのも余韻があっていい。

また明治時代になり階級社会で酷い目にあってきた駿介の父母が大きな屋敷で幸せそうに暮らしている様子には救いがある。後味のよいエンディングである。

余談だが、前作『あずみ』は上戸彩主演で2本も映画化されて驚いた記憶があるが、コレジャナイ感が半端なかった。こうした黒歴史があると、是非実写映画で見てみたい作品であるが、本作の映画化も難しいだろうと思ってしまう。まあ機会があれば、今度はあずみ役に脱げる女優を配してほしい。