早稲田松竹で映画『トレインスポッティング』(1996年、監督:ダニー・ボイル)を鑑賞。アーヴィン・ウェルシュの同名小説の映画化。続編の映画『T2 トレインスポッティング』(2017年)との二本立てだった。2作を通して観るいい機会と思い出かけるが、整理券が配られるほどの混雑で人気の高さがうかがえた。
スコットランドのエディンバラを舞台に、ヘロイン中毒の労働者階級の若者たちの日常を斬新な映像感覚で描いた話題作。英語圏はもとより日本でもヒットしたダニー・ボイル監督の出世作。
20年前の映画ということもあり、当時は斬新とされた映像感覚もいま見ると、いろいろな映画で模倣されて新鮮味はあまりない。それでも単なるファッション映画として片付けることはできない魅力がある。ただし、過激な表現もあるので人によっては受け付けないかもしれない。
本作が青春群像映画の名作としてこれからも語り継がれていくのか分からないが、いま見ても十分に魅力的な作品である。当時も日本映画でもこんな作品ができないものかと思った記憶がある。
ただこの映画をしっかり抑えるには、スコットランドのことをよく知る必要がある。この映画のなかのスコットランドは、サッチャー政権の経済政策のあおり受けて不況に苦しんでいる。サッチャーは財政赤字を克服し英国経済を立て直した功績があるとされる一方で、労働者階級の失業を招き、地方経済を不振に追いやったとされ毀誉褒貶の激しい人物で評価が定まらない。若者たちにとっては失われた時代である。
またスコットランドのアイデンティティも重要である。強いスコットランド訛りも味になっているが、正直何を話しているのはさっぱりわからない。アメリカでは英語字幕がついたという。また主人公のレントン(ユアン・マクレガー)がひと旗上げようとロンドンでまっとうに暮らそうとするシーンがあるが、日本の地方出身者が東京を目指すのとはちがう感情があるにちがいない。
Trainspotting (1996) Official Trailer - Ewan McGregor Movie HD
日本人にとって映画の背景を理解するのはなかなか難しいが、ラストにレントンが金を持ち逃げする場面の疾走感、爽快感は特筆できる。このラストは『明日に向かって撃て』に比肩するほどの名場面である。このラストのために残りの映画があるとすら感じられる。
ラストが想定外だったので続編はできないだろうと思っていたが、なんと今年続編が公開されて驚いた。T2については別の記事で感想を書きたい。