新文芸坐で映画『ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ』(2018年、監督: ステファノ・ソリマ)を鑑賞。ルール無き国境麻薬戦争の闇を極限の臨場感で描くサスペンス・アクション。主演はベニチオ・デル・トロ。第1作『ボーダーライン』(2015年)の続編で、当日は第1作と本作の二本立てだった。
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- 発売日: 2019/04/02
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米国内で自爆テロが発生し多数の市民が犠牲になる。その実行犯はメキシコ国境を支配する麻薬カルテルによる密入国ビジネスで潜入したと判断した国防省は、麻薬カルテルを「テロ組織」に認定する。カルテルを壊滅させるため、CIA工作員マット(ジョシュ・ブローリン)にメキシコ国内での非合法の工作活動を命じる。これを受けて、マットは旧知のアレハンドロ(ベニチオ・デル・トロ)と組み、カルテルのボスの娘イザベル(イザベラ・モナー)を誘拐してカルテル同士を争わせようと画策するが……。
SICARIO: DAY OF THE SOLDADO - Official Trailer (HD)
前作の主役ケイト(エミリー・ブラント)は登場しない。前作で「お前にいる場所ではない」と言われてしまったので彼女がいないのは想定内だが、ケイトの成長譚として続編をつくってもよかったかもしれない。
本作では、麻薬密輸より密入国ビジネスのほうがカネになるという時事ネタを背景にして、メキシコ国境を越える密入国者たちと、それを手引きするカルテルの少年が描かれている。密入国ビジネスの一端を垣間見ることができる。
また麻薬カルテルのボスの娘を誘拐したアレハンドロが、人質の娘と二人で逃避行する場面はロードムービーのようで興味深い。非情に徹した前作とは異なり娘をいたわる姿はやや違和感があるが、途中でろうあ者に出会い手話でコミュニケーションをとる場面はアレハンドロの人間性が滲み出ていて感慨深い。
ラストで冒頭の自爆テロの犯人は米国市民であることが判明し、麻薬カルテルとは関係ないことがわかる。それでも非合法工作の痕跡を消し去りたい国防省は、国境を侵してヘリでカルテルの車列を襲って人質だった娘を亡き者にしようとする。非道な任務の指揮を執るマットが下す判断は……。最後まで飽きずに見られるサスペンス・アクションの佳作。
さて今回、前作との2本立てで続けて見たが、監督が交代したこともあってかなりテイストが違っている。本作のほうがエンタテインメントに徹しているストレートな映画にいえようか。どちらが優れているかはその人の好みだろうが、個人的には第1作のほうが断然好みである。