退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『T2 トレインスポッティング』(2017) / 中年の危機を実感させる同窓会映画

早稲田松竹で映画『T2 トレインスポッティング』(2007年、監督:ダニー・ボイル)を鑑賞。90年代の伝説的青春映画『トレインスポッティング』(1996年)の20年ぶりの続編。オリジナルのスタッフとキャストが集結してが作られた続編が完成し話題になった。今回は1と2の連続上映だったので、1を見た後にすぐに2を見れたのはよかった。

いわば同窓会な映画。1からの引用が多くみられるので、1を見ていないと何だかわからないだろう。この映画を見る人はまず1を見てから2を鑑賞することをオススメしたい。

20年前に仲間から大金を持ち逃げしたレントンユアン・マクレガー)はオランダに逃亡していたが、20年ぶりにエディンバラに戻っていくる。かつての仲間は、モノわかりのいい大人に成長してまっとうに暮らしているかと思いきや、あいかわらず連中は荒んだ人生を続けていた。

レントンは仲間から仕返しされるかと心配するが、いちばん凶暴なベグビー(ロバート・カーライル)は暴力事件により刑務所に収監されていて一安心。ところがベグビーが脱走して復讐のためレントンを追い回し、さながら鬼ごっこのよう展開になる。

エディンバラの古い町並みは変わらないものの英国経済が復調している様子が描かれる。しかしレントンと仲間たちは若い頃にまとも教育も受けられず、いい大人になってもまっとうな職業に就けずに軽犯罪で糊口をしのぐありさま。まさに中年の危機。

上映終了後、女性客が「外人は日本人より老けて見える」と言っていたがまさにそのとおり。若い頃はかっこよかったルックスもいまではすっかり中年の面相になり果てて哀愁すら感じる。

その一方で、前作でいい学校に通っていたガールフレンドは、しっかり弁護士になっていて格差社会を実感させる。やっぱり20歳代までに、まともな教育と職業経験がないとあとが苦しいという事実は先進国共通なのだろう。世の中はきびしい。


T2 Trainspotting Official Trailer – At Cinemas January 27

あいかわらず時事ネタというかスコットランドの世相を反映した部分は日本人には分かりにくい。ユニオニストのバーで1690年の「ボイン川の戦い」が登場する場面は、イギリス人でないとピンとこないだろう。またEUの中小企業の支援プログラムから融資を受けたり、サイモン(ジョニー・リー・ミラー)がブルガリア移民ベロニカを使って美人局したりするのは、EUのなかのスコットランドを感じさせて興味深い。

そうしたなかイギリスはUKからの離脱に向けて動き出した。それを受けてスコットランド独立を目指す動きもあるという。次回は20年後とは言わず、スコットランド独立が実現した暁にはぜひ「トレインスポッティング」の第3作を見てみたいものである。もちろん同じキャストで。

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