退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

『薄桜記』(1959)

先日、角川シネマ新宿で開催中の〈大雷蔵祭〉で「薄桜記」(1959年、森一生)を観る。赤穂討ち入りを背景に、赤穂浪士堀部安兵衛(勝新太郎)と丹下典膳(市川雷蔵)の友情と悲恋を描く。討ち入りの時季にタイムリーに鑑賞できた。

薄桜記 [DVD]

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時代劇としては新鮮に感じたが、突き詰めれば過剰なメロドラマといえる。途中、シリアスなのか喜劇なのか観ていて悩む展開はどうかと思うが、終盤の壮絶な殺陣からラストに至るまでの映像美は特筆できる。とくに雪の中の頭上からのショットは圧巻。

だが、一連の事件の対処方法については、悲劇を回避できる、より適切な事後処理の方策がいくつもあったのではとないか、と現在の視点からは思える。価値観の変化と言うのはたやすいが、主人公自ら破滅に向かっているとしか思えないストーリーは陳腐さを拭えない。