退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

『幻の光』(1995)

先週、早稲田松竹で鑑賞。是枝裕和監督のデビュー作品。

まず江角マキコがいい。「ショムニ」に出演する以前の作品で、彼女の素の魅力がよく出ているように思う。主人公が、前向きになった転換期を描きたかったのか、それとも過去に縛られ続ける姿を描きたかったのか。暗い過去を持つ女性の心情と奥能登の風景のコンビネーションが胸にせまる。とくに日本海が荒波の厳しさや暗さは必見。

最後まで気になるのは前夫・浅野忠信の自殺の動機だが、結局明らかにならない。自殺後、舞台が奥能登に移るのだが、そのストーリーの大転換の見事さにも唸らされる。

この映画は昨年、「シネマアートン下北沢」(今年6月に閉館)で観たことがあるが、上映後、美術を担当した部谷京子氏が、この映画について話をしてくれた。そのときにDVDの特典映像のことを教えてもらい、さっそく観てみた。これは8年ぶりに江角氏と監督がロケ地を訪れるという映像で、廃線になったのと鉄道、ロケに使った家のたたずまいなど、時の流れを感じささせる趣のある内容であったのを思い出す。この映画を観た人は、ぜひDVDで特典映像も観てほしい。

幻の光 [DVD]

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