DVDで映画『日本の夜と霧』(1960年、監督:大島渚)鑑賞。モダンなジャケットが印象的。
この映画は昔、どこかの名画座で見たことがあるが、あらためすごい映画だった。60年安保闘争をテーマにしてるが、内容は同時代に生きていた人でなければ本当に理解することは不可能だろう。もはや大島渚監督の意図を解する人は時代的に難しい。
いまではリアルタイムで学生時代に安保闘争を経験した世代はほとんど残っていない。先の大戦と同じように安保闘争も遠い歴史上の出来事になってしまったというべきだろうか。
それでも内容はともかく、演出には見るべきものがある。カット割りのない長回しの手法を多用し、俳優が少々セリフを間違えても中断せず撮影を続けている。内容が社会的に過激だったため会社から中止されるのを恐れて、撮影期間を短くするためだったという。その手法が劇中に独特の緊張感を生んでいる。インディーズでもなく、天下の松竹映画でこうした前衛的な映画が撮られたのは感嘆するばかりである。
しかし浅沼稲次郎暗殺事件の影響もあり、本作は公開からわずか4日後、松竹が大島に無断で上映を打ち切っている。大島はこれに猛烈に抗議して松竹を退社することになる。そうした経緯から日本映画史の記念碑的作品でもある。
それにしても「こんな結婚式はイヤだ」と思ったのは私だけではないだろう(笑)。
また劇中に繰り返し登場する「若者たち」というフォークソングが印象的に使われていて、「若者よ体を鍛えておけ」というフレーズが耳に残る。