退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『アンコ椿は恋の花』(1965) / 都はるみのヒット曲をフィーチャーした青春歌謡映画

昔は“歌謡映画”という不思議なジャンルがあったが、映画『アンコ椿は恋の花』(1965年、監督:桜井秀雄)もそのひとつ。1964年にレコード大賞新人賞を受賞した都はるみの同名ヒット曲を取り上げた作品。アンコ椿ということで、当然、伊豆大島が主な舞台になっている。松竹映画。

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東芝府中工場(なぜか実社名)に務める旋盤工・修一(竹脇無我)は伊豆大島を旅行したときに知り合った明子(香山美子)と恋に落ちる。明子には旅館の息子・豊太郎(勝呂誉)との縁談話が持ち上がっていた。東京に戻った修一は、明子に手紙を送るが返事はなかった。

一方、歌手志望の明子の妹・はるみ(都はるみ)は歌の勉強のため上京する。やがてオーディションに合格してレコードデビューする。はるみは、修一と豊太郎の間に揺れる姉・明子を応援するが……。

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都はるみがこぶし全開で歌いまくる映画だが、そうした歌手パートとはほとんど関係なく進行する竹脇無我香山美子の恋愛ドラマがメインである。伊豆大島のロケが美しい。どうということはプログラムピクチャーだが、しっかり出来ていてなかなか面白い。

ヒロイン香山美子と言えば、後年テレビ時代劇「銭形平次」(大川橋蔵主演)で平次の女房・お静を長く演じたことで知られている。この映画では、バスガイド姿を披露していてかわいらしいし、松竹女優陣の層の厚さを感じさせる。

一方、修一は旋盤の技能を磨いて技能五輪を目指すという設定。工場の班長が、修一を五輪で優勝させるために、明子から手紙を渡さず、電話も取り次がないという鬼畜ぶり。

また修一が参加する「技能五輪」の様子は時代を感じせて興味深い。この競技大会はいまも継続されているようだが、当時苦労して磨いた技能も工作機械の自動化によってどうなったのだろうか。技能工は報われてのだろうか。そんなことにも思いをめぐらすこともできる映画である。