DVDで映画『新宿泥棒日記』(1969年、監督:大島渚)を鑑賞。パート・カラー。ATG配給。ある女と出会った青年の恋を描いたドラマ。
60年代末。新宿の紀伊國屋書店。青年・鳥夫(横尾忠則)が万引で女店員・ウメ子(横山リエ)に捕まる。彼女は、鳥夫を紀伊國屋書店社長の田辺茂一の前に突き出す。社長は「万引をいちいち連れてこなくてもいい」とウメ子に言い、鳥夫を許してしまう。女は偽店員だったのだ……。
本作は、ジャン・ジュネの『泥棒日記』の引用なのだろうが、これがインテリアの映画なのだろう。即興とドキュメンタリズムに満ちた野心作であり、当時の新宿の猥雑さを捉えているように思える。当時を実体験として知らないので「思える」としか言えないが……。
大島渚監督は、素人を役者に使うことが多かった。本作でも、のちにグラフィックデザイナーとして大成する横尾忠則が主役に起用されているし、紀伊國屋書店社長の田辺茂一が本人役で登場するのもちょっとした見どころだ。それにしても横山リエが若い。
冒頭から新宿東口でふんどし姿でパフォーマンスする唐十郎で存在感は圧倒的。唐十郎の歌が耳から離れない。その唐十郎率いる状況劇場に導かれて、新宿をさまようある青年と彼に出会った女の恋の行方を描いていく。
いちばん印象的だったのは、佐藤慶たちがセックスについてあれこれ議論しているところ。酔っ払っているだけじゃないかと思うが、当時の演劇人たちの雰囲気はこんなものだったのだろうか。それにしても佐藤慶と渡辺文雄が女を追いかけるシーンは不思議だった。
ラストは新宿騒乱の呼び水となる交番への最初の投石のシーンである。私が学生だったころ「このフェンスは新宿騒乱の後にできたんだよ」と先輩に教えてもらったことを覚えている。社会にエネルギーが充満していた時代だったのはたしかのようだ。
そんな時代をフィルムに切り取ったという点だけでも、本作は価値があるように思える。理解不能だけどね。