退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『日本戦歿学生の手記 きけ、わだつみの声』(1950) / 究極の不条理劇

DVDで映画『日本戦歿学生の手記 きけ、わだつみの声』(1950年、監督:関川秀雄)を鑑賞。戦没学生の手記『きけ、わだつみの声』の映画化。東映映画。白黒映画。

戦時中のインパール作戦で敗走を続ける日本軍部隊。この部隊にも多くの学徒兵が徴兵されていた。そのなかの見習い士官の牧(沼田曜一)は、ある日、二等兵として軍務についていた大学の恩師である助教授・大木(信欣三)と出会う。職業軍人である上官との摩擦が強まるなか、退却命令を受けるが、重傷の傷病兵は陣地を固守するように命じられる……。

少し前まで軍部のプロパガンダ映画を撮っていた映画人たちが、一転、本作のような反戦映画を撮るのだから節操がない……。まあそういう時代の変わり目だったのだろう。

正直、この映画で描かれている戦争にどれだけリアリティがあるかわからない。戦争経験者がつくったのだから、少なくともまったくのデタラメというわけではあるまい。淡々とした冷酷な映像には説得力があるように思える。

場面としては、回想シーンとして挿入される大学でのフランス文学のゼミの様子と戦地の様子との対比が面白い。

ラストの地獄絵からの幽体離脱の流れは、映像技術として洗練されているとは言えないがさすがに泣かされる。

当時の映画としてはスターが出演しない異色作。それだけに演技派俳優が集められていて演技に見応えがある。この映画の美点のひとつである。