退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『少年時代』(1990) / 藤子不二雄Aのマンガの映画化作品

藤子不二雄Aの追悼企画として放送された映画『少年時代』(1990年、監督:篠田正浩)を鑑賞。藤子不二雄Aにより1978年から1979年まで『週刊少年マガジン』(講談社)に連載された同名漫画の映画化作品。

昭和19年。東京に住む小学5年生の進二(藤田哲也)は戦局の悪化にともない富山県にひとりで縁故疎開する。そこで子どもたちのリーダー格である武(堀岡裕二)と親しくなるが、学校ではなぜか進二につらくあたる……。


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映画はヒットしなかったが、あらためて見るとジュヴナイル映画としてよくできている。子ども社会のリアルな人間関係、友情がよく描写されていていろいろ考えさせられる。傑作といってよいし、もっと注目されてもよい映画だろう。

終戦後、進二は母(岩下志麻)に連れられて東京に帰ることになり、ふたりの友情はこれまでかと思ったが、そこからラストの蒸気機関車のシーンへの流れはベダだが見事。

そのラストに流れる井上陽水のヒット曲「少年時代」が主題歌に効果的に使われているのも特筆できる。映画より主題歌のほうが断然売れたが、映画が主題歌に隠れるというめずらしい作品でもある。

ごく個人的には、進二の太った同級生・太の姉役に仙道敦子が出ていたのは高ポイント。恋人との逢い引きのシーンで突然脱ぎだして一瞬ドキドキさせられるが、まあたいしたことはない。また大橋巨泉が写真館の主人役で出演しているのも要注目。その写真館で撮った写真が重要な小道具になるわけだが、なかなか堂に入った芝居だった。