退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『鯨と斗う男』(1957) / 近代捕鯨を題材にした高倉健主演作

YouTubeの「TOEI Xstream theater」チャンネルで映画『鯨と斗う男』(1957年、監督:津田不二夫)を鑑賞。主演は高倉健

捕鯨船隼丸の船長権堂(佐野周二)は、部下に対する無慈悲な扱いや、鯨を見つけたら手段を選ばないやり方により皆から恐れていた。そこへ新進気鋭の銛打ち山上洋介(高倉健)が転任して来る。洋介の亡き兄は、かつて権堂の下で働く有能な銛打ちであったが、権堂の酷使がもとで死んだと噂されていた。洋介は別の捕鯨船に配属されるが……。


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高倉健の初期の主演作。スクリーンに登場しても「だれ?」というほどイメージとはちがっていて驚く。船員たちの男気のぶつかり合いが主題ということもあり、何かというとすぐに乱闘になる。乱闘シーンになると、ようやく健さんらしさが発揮されている。

最後は佐野周二高倉健と和解してあっけなく終わるのはプログラムピクチャーとしては仕方ないが、やや物足りない。劇中にはメロドラマの要素も一応あり、相手は酒場の女給ユキ役の小宮光江。当時としてはグラマーで魅力的である。

この作品はいまとなっては、娯楽映画というよりも沿岸捕鯨が活況を呈していたころの捕鯨船や加工場を記録した映画としての価値が高いだろう。捕鯨船が思ったより大きい。これを日本の昔からの捕鯨文化と言われても通らない。明らかに資本主義的商業捕鯨だ。

また「鯨まつり」の様子も興味深い。一般の人が係留された捕鯨船から銛打ちして的を狙うお遊びが「供養」として行われている。これで供養になるのかなと不思議に思ったが、まつりなので楽しければいいのだろう。

昭和の捕鯨基地の様子を垣間見れるという点で一見の価値はある。