退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『野菊の墓』(1981) / 松田聖子の初主演にによるアイドル映画

DVDで映画『野菊の墓』(1981年、監督:澤井信一郎)を鑑賞。当時トップアイドルだった松田聖子の初映画主演作。サンミュージックが製作会社に名を連ねる。原作は伊藤左千夫の同名小説。澤井信一郎の初監督作品でもある。

アイドル映画だからと侮れない骨太な作品。松田聖子や相手役の桑原正のコンビの演技にはもちろん難があるが、周囲の役者が素晴らしくさほど気にならない。とくに樹木希林の味のある演技が冴えている。

澤井監督は長く東映で助監督を務めてきて、本作で念願の監督デューを果たしている。しかし初監督らしい初々しくはない老練さすら感じさせる。マキノ雅弘に師事したというから年季が入っていたわけだ。

冒頭、主題歌「花一色〜野菊のささやき〜」が流れるのが印象的。松田聖子主演となれば、どこかで主題歌を挿入しなければいけないのだろうが、いきなりかよと驚かされる。劇中に主題歌を入れたくなかったのかと思ったが、その後もしつこいぐらいに幾度もメロディが流れて叙情的な雰囲気を醸し出す。見ているうちに、すっかり曲を覚えてしまった。ちなみに主題歌は「白いパラソル」のB面だった。

クライマックスは松田聖子の花嫁姿。アイドル映画の定番のシーン。正直、松田聖子はそれほど美人ではないし、本作ではおでこを出して「これどうなの?」と思わなくもなかったが、花嫁姿の場面は美しく撮られていて引き込まれる。さすがプロの仕事。


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澤井監督は本作が評価されたのか、後に『Wの悲劇』(薬師丸ひろ子主演)、『早春物語』(原田知世主演)などのアイドル映画でメガホンをとっている。

この映画を見直そうと思ったのは、昨年の澤井信一郎監督の訃報に触れたことや、ある不幸なことにより松田聖子のメディアへの露出が増えたから。映画公開から40年というから驚きだ。それだけの時間が流れれば人生にもいろいろなことが起こる。あらためて時の流れのはやさが身に染みた。