退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『あなたと私の合言葉 さようなら、今日は』(1959) / 市川崑監督による小津安二郎へのオマージュか!?

DVDで映画『あなたと私の合言葉 さようなら、今日は』(1959年、監督:市川崑)を鑑賞。主演は若尾文子大映映画。

東京でデザイナーとして自動車会社に務める和子(若尾文子)には、同じ会社の同僚で大阪に単身赴任している半次郎(菅原謙二)という婚約者がいたが、失業中の父(佐分利信)とスチュワーデスの妹(野添ひとみ)の世話があるため、すでに適齢期にもかかわらず結婚を決意できないでいた。そこで和子は、大阪で商売を営む親友の梅子(京マチ子)を通じて、婚約解消を申し出る。ところが梅子は半次郎に一目惚れし、和子の了解を得て強引に求婚して、結局ふたりは結婚することになるが……。

あなたと私の合言葉 さようなら、今日は - YouTube

小品であるが印象に残るヘンな映画である。父娘の関係を描くというテーマもそうだし、棒読みのセリフ回しなど随所に小津安二郎のパロディを思わせるネタがいろいろおかしい。挙げ句に、東京・大阪間で電車を走らせる念の入れようだ。

ヒロインの若尾文子は清楚なのだが、ちょっと可哀想な役回り。変なメガネを掛けさせられて、平板なセリフ回しだし、父親からは「お互い捨て会おう」自立を促され、婚約者を親友に取られて踏んだり蹴ったり。挙げ句に単身渡米することになって一人ぼっち。

父親はひとりは困るのだろう、和子の妹夫婦(野添ひとみ川口浩)が家に転がり込んでくることを計算してたのかなぁと勘ぐってしまう。こうなると、ますます和子が可哀想になってくる。

ラストシーンで和子が日本を離れるというので、全員集合して羽田でお見送りかと思ったが、なんと船だった。この時代は、庶民はまだ船で太平洋を渡っていたのかと思うと、やはり時代を感じる。

昔の映画ではあるが、「親離れと子離れ」というテーマは現代にも通じるものがあり、その点については普遍性があるなと思った。