退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『女系家族』(1963) / 大阪・船場の繊維問屋の遺産相続を巡る人々の欲望

東京国立近代美術館フィルムセンターの《アンコール特集:2015年度上映作品より》で映画『女系家族』(1963年)を鑑賞。三隅研次監督の特集企画からのアンコール上映。三隅監督は時代劇で知られるが、このような文芸作品でも手腕を振るっていたことを再発見した。

この作品は山崎豊子の同名小説を豪華キャスティングで映像化した大映映画。大阪・船場の老舗木綿問屋「矢島商店」は、代々家付き娘が婿養子をとる女系の家柄。当主の矢島嘉蔵が死去し、身重の愛人・浜田文乃(若尾文子)と嘉蔵の娘である三姉妹(京マチ子鳳八千代、高田美和)、さらに三姉妹の叔母芳子(浪花千栄子)や大番頭宇市(中村鴈治郎)、長女の踊りの師匠(田宮二郎)を混じえて、膨大な遺産の相続を巡る壮絶な争いが描かれる。

最後のどんでん返しは何度見ても痛快だし、若尾文子をはじめとする女優陣は美しい。だが特筆すべきは、芸達者である浪花千栄子中村鴈治郎の演技だろう。いまの俳優では決して出せない深い味わいがある。半世紀以上前の映画だが、いま上演して劇場が笑いに包まれるのは大したものだ。

本作のほかにも原作は再三にわたり映像化されている。最近では舞台を2005年の東京・日本橋に翻案してTBSで放送されたがテレビドラマがあるが、残念ながら未見。このドラマでは、若尾文子の役を米倉涼子京マチ子の役を高島礼子がそれぞれ演じているらしい。一度見てみたいものだ。