退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『子連れ狼 親の心子の心』(1972) / 若山富三郎版「子連れ狼」シリーズ第4作

少し前に新文芸坐の《若山富三郎主演 「子連れ狼」 壮絶!一挙上映》という企画で、映画『親の心子の心』(1972年、監督:斎藤武市)を鑑賞。原作は小池一夫原作・小島剛夕画の時代劇劇画。全6作つくられた若山富三郎主演、「子連れ狼」シリーズ第4作。

刺客道を歩む拝一刀(若山富三郎)は、尾張藩から胸と背中に刺青をした別式女の雪(東三千)を斬るよう刺客依頼を受ける。雪は、妖術使いの武芸者・狐塚円記(岸田森)との立会いに負けて陵辱され、脱藩し、藩からの追手を斬って髷を藩に送り付けて挑発する。円記をおびき出して復讐するためである。一刀の前で雪と円記との因縁の立ち会いが始まり、雪は円記の術を破り大願成就を遂げる。それを見届けた一刀は雪を斬る。

雪の最期を父・仁太夫山村聰)に伝えるべく、一刀は乞胸集落を訪ねる。そこに尾張藩の追っては現れ、仁太夫を斬り捨てる。それは柳生烈堂(遠藤辰雄)の陰謀であり、藩主・徳川義直小池朝雄)をそそのかして登城した一刀を尾張藩に斬らせようとする策略だった……。


子連れ狼 親の心子の心 (1972) - 予告編

第3作まで三隅研次が監督を務めていたが、本作では斎藤武市に交代している。これまで劇画原作の破天荒さはああるものの概してハードボイルドな作風だったが、本作はお雪の情念を描くあたりはかなりジメジメしていた。それでも宮川一夫の撮影はさすがで映像は美しい。

とくに別式女・お雪に扮した東三千の裸体が美しいに撮られている特筆できる。胸に金太郎、背中に山姥の刺青を彫った女武芸者なんて実写にしたらお笑いになりそうなものだが、これがなかなか様になっている。なかでも刺青を彫る音がリアルでちょっと怖かった。刺青を入れる女は若尾文子も演じていたが絵になる題材のようだ。

ラストは、藩主を人質にとって岩山に逃れた一刀を裏柳生軍団が一斉に襲うという大立ち回り。激しい砲撃はもはや時代劇ではなく火薬を大量に使ったアクション映画の域だろう。さすがの一刀も敵の刃を受けてボロボロになりながらも、なんとか切り抜けるというエンディング。

コロンボこと小池朝雄が扮する尾張藩主の行動の一貫性のなさはどうなのよ、と思っているうちに柳生の砲撃に見まされて藩主はあっけなく爆死。仮にも徳川御三家筆頭の尾張藩主を殺しちゃっていいかなと思ったが、「細かいことはいいんだよ」というノリで乗り切ってしまう。

監督が替われば作品も変わるものだと改めて思った次第。

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