退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『子連れ狼 死に風に向う乳母車』(1972) / 若山富三郎版「子連れ狼」シリーズ第3作

少し前になるが新文芸坐の《若山富三郎主演 「子連れ狼」 壮絶!一挙上映》という企画で、映画『死に風に向う乳母車』(1972年、監督:三隅研次)を鑑賞。原作は小池一夫原作・小島剛夕画の時代劇劇画。全6作つくられた若山富三郎主演、「子連れ狼」シリーズ第3作。

柳生との確執の末、刺客道を歩む拝一刀(若山富三郎)とその子・大五郎(富川晶宏)。一刀は、死に場所を求める渡り徒士・孫村官兵衛(加藤剛)に立会いを求められるが、官兵衛のなかに真の武士の姿を見た一刀は刀を収めて勝負を「分け」とした。

一刀は女衒の文句松(名和宏)を殺してしまった少女をかくまう。少女は、木颪の酉蔵(浜木綿子)の一家に女郎として売られていたが、一刀は引き渡しを拒む。その落とし前として「水責め」と「ぶりぶり」にかけられることを承知して少女を故郷に帰してやる。

少女を解放した一刀は、酉蔵の父・三浦帯刀(浜村純)から天領代官・猿渡玄蕃(山形勲)を斬ってくれと刺客依頼を受ける。護衛を一刀に討ち取られ追い込まれた猿渡は、近隣の藩から応援を頼み、弓隊や鉄砲隊を伴い一刀を迎え撃つが……。


子連れ狼 / 死に風に向う乳母車【予告編】

クライマックの弓隊・鉄砲隊を向こうにまわしての一刀の大立ち回りは必見。乳母車の装備したガトリング銃で敵をなぎ倒すあたりは、もはや時代劇の範疇を越えてマカロニウエスタンと言っていい。破天荒も極まる。

ラストに加藤剛が扮する渡り徒士と一刀の立ち会いを持ってっくるあたりは上手い。武士道とは何かと観客にと問いかけることにより、かろうじて時代劇の体裁を保っている。実直な武士を貫く加藤剛も適役に思えた。

他の出演者では、木颪の酉蔵を演じた浜木綿子が光る。あまりの男前ぶりに驚く。彼女は宝塚歌劇団の出身だが男役ではなくトップ娘役だったので意外に思った。余談だが浜は香川照之の実母である。

劇画が原作なこともあり、リアリティの欠片もない脚本なのだが、映像に風格があり美しく撮れていて、娯楽映画として破綻していないのは三隅研次監督の手腕によるものだろう。

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