退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『櫻の園』(2008) / 中原俊監督による傑作「櫻の園」のリ・イメージ作品

DVDで映画『櫻の園』(2008年、監督:中原俊)を鑑賞する。傑作のほまれ高い1990年版を監督自らリメイクした作品だが、内容は一新されていて、「リ・イメージ」というべき作品。原作は、吉田秋生のオムニバス漫画。

ヴァイオリニストになる夢を失った少女・結城桃(福田沙紀)が、姉(京野ことみ)がかつて通っていた名門女子高校「櫻華学園」へ編入してくる。音楽学校の方針とそりが合わず、新たな目標を見つけにきたのだ。旧校舎の廃部となった演劇部の部室で、桃はチェーホフの「桜の園」の台本を見つける。ある事情により、その演目は上演禁止となっていた。桃は再び「桜の園」の上演しようと、同級生や仲間たちを誘い奔走するが……。


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オスカーが製作に加わっていることもあり、主演の福田沙紀をはじめ事務所が売出し中の女優たちが大挙出演していて、旧作とはちがい現代的な青春ガールズ映画という趣きである。オスカーの看板だった米倉涼子菊川怜上戸彩が特別出演している。

福田沙紀や寺島咲、杏、大島優子はねゆり武井咲といったキャストを揃えると、やっぱり学芸会になってしまう。劇中劇が学芸会なのは当然としても、映画全体が学芸会なのはシニカルである。

それでも一応映画としての体をなしているのは、監督たちスタッフの力量によるものだろうか。今回見たDVDには監督たちによるオーディオコメンタリーがついていた。撮影時の思い出話を楽しそうに話していて面白い。聞き手がいなくて勝手にしゃべる形式で、へんな沈黙があるのは愛嬌か。

長台詞が多い福田沙紀が役をきちんとこなしているのは意外だった。器用なのだろう。大器の片鱗をのぞかせる。また劇中、杏が走り高跳びで背面跳びを決めて女学生たちから歓声を浴びるシーンが目を引く。他の出演者と並ぶと頭ひとつ出る体躯は長身フェチにはたまらない。

見どころはあるが、旧作『櫻の園』を撮り高い評価を受けた中原俊監督がこの映画を撮る意味がどこにあったのか。作品への愛情があったと信じたいが、作品自体は低調である。