俳優の松方弘樹さんが、21日に死去したとの訃報が届きました。74歳でした。
松方さんは東映時代劇スターだった近衛十四郎を父に持ち、自身も東映から主演デビューしました。以後、東映時代劇の末期に立会い、時代劇が衰退すると任侠映画や実録ヤクザ映画で活躍しました。『仁義なき戦いシリーズ』での敵役・悪役は松方さんの代表作です。
その後、東映時代劇復興の動きがあり、映画『柳生一族の陰謀』などに出演するとともに、テレビ時代劇でも大河ドラマ『勝海舟』や時代劇『大江戸捜査網』で主演を務めました。
私にとっては、松方弘樹さんは最後の時代劇スターのひとりであり、以下に時代劇映画から勝手にベスト3を挙げて追悼に代えたいと思います。
柳生一族の陰謀(1978年)
東映時代劇復興路線の第1作。徳川家光(松方弘樹)と忠長(西郷輝彦)の将軍職をめぐる争いを描く、深作欣二監督の手腕が冴える娯楽大作。松方は顔に痣があり吃音症のある家光を熱演し新境地を見せた。
この映画は柳生十兵衛(千葉真一)が文句なくかっこいいし、柳生宗矩(萬屋錦之介)の大仰な芝居も面白い。ラストで柳生の里を焼き討ちされて激怒した十兵衛が家光を斬り、その生首が宗矩の前にゴロンと転がる。そのときの宗矩の名セリフ「ゆ、夢じゃ。これは夢でござる」はあまりにも有名。
真田幸村の謀略(1979年)
これも東映時代劇復興路線に連なる一作で、宇宙空間から始まる異色の時代劇。松方は主役の真田幸村を演じている。映画としてはいろいろ言いたいことがあるがラストは必見。
幸村は、大阪の陣で真田十勇士ともに徳川家康(萬屋錦之介)を追い詰めて、本当に家康を討ってしまうトンデモ時代劇。幸村が刎ねた家康の首が真上に跳ね上がり、その後すぐに幸村が射殺されるシーンが印象的。射殺される松方の演技は唸らされる。
昨年の大河ドラマが『真田丸』だったこともあり、このレア作品がBSで放送されてので見た人も多いだろうがどう思っただろうか。
十三人の刺客(2010年)
1963年の映画『十三人の刺客』を三池崇史がリメイクした時代劇映画。監督の持ち味を活かした派手なアクション映画に仕上がっている。
- 発売日: 2011/05/27
- メディア: Blu-ray
暴君として悪名が高い明石藩藩主・松平斉宣(稲垣吾郎)が将軍職に就くことになる。しかし、それでは国が滅ぶとばかり、幕府は島田新左衛門(役所広司)を中心とした刺客たちを差し向けて斉宣を暗殺を図る。
松方は新左衛門の懐刀である倉永左平太役。役者の格からしたら、松方が新左衛門役でもいいと思ったものだが、松方一流の殺陣を存分に披露していて見応えがある。時代劇の将来を担う後進への彼の遺言ともいえる作品。
ぜひもう一度大きなスクリーンで見たいが、名画座の追悼企画で上映されるないだろうか。