退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

スペシャル時代劇「十三人の刺客」を見た(中村芝翫 vs 高橋克典)

NHK BSプレミアムで放送されたスペシャル時代劇「十三人の刺客」を見た。「十三人の刺客」のオリジナルは、工藤栄一監督、片岡千恵蔵主演により、1963年に公開された同名の東映映画。この作品は何度も映像化されているが、この時期に放送されるとは驚いた。ずっと前に撮影していたのだろうか。

老中・土井大炊頭(里見浩太朗)は、将軍の弟ながら暴君として悪名高い明石藩主・松平斉継(渡辺大)の暗殺を、御目付役・島田新左衛門(中村芝翫)に密かに命じる。密命を帯びた新左衛門は仲間を集めて天下の一大事に臨む。一方、新左衛門の無二の親友・鬼頭半兵衛(高橋克典)は明石藩側用人として士官しており、斉継暗殺を阻止するべく新左衛門の前に立ちはだかるが……。

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梨園の人はどんどん名前が変わるので誰なのかすぐにわからなかったが、主演の中村芝翫は貫禄十分。さすがです。一方の高橋克典は悪くないが、『特命係長 只野仁』のイメージが私のなかでは強く、すぐに「ふんふん」言いそうなのが気になった。

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どうせテレビ時代劇レベルだろうと思って見たが、なかなか見応えがあった。惜しいのは斉継の狂気が十分に描けていないこと。以前も書いたが、この物語の肝は暴君・斉継のキャラだろう。テレビでは過度に残酷な描写はできないのだろうが、もう少し工夫できたはずだ。

注目したいのは宿場町の死闘のクライマックスで、新左衛門が斉継討つ場面で右腕を切り落とすシーン。テレビドラマの枠ではギリギリの演出だったのかもしれないが一気にテンションが上がる。

最後に新左衛門の甥の島田新六郎について触れておきたい。放蕩三昧の暮らしをしていたが新左衛門に誘われて刺客の一員となり、死闘をくぐり抜けて生き残るという役だ。本作では福士誠治が演じているが、1963年のオリジナル映画では里見浩太朗が演じていた。里見は本作では新左衛門に密命を与える老中役で出演している。時は流れたというべきか。

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ラストで新六郎が新左衛門の名跡を継いだことが語られ、芸妓だった小えんを家に入れて幸せそうにしている姿が描かれる。あと味のよい幕切れである。